5-17
フレアとポリーの防具が出来てからというもの。
食事が豪華になった。
「今日は山の近くまで行って来たっす!」
「一杯キノコ採れたわ」
「――きのこ祭りだぜ」
「いえーい!」
広場に盛りまくったキノコの山が出来たり。
「今日はあっち行ってきたよー」
「面白い魔獣が居たのよ」
「ほら、角つきっす!」
「――美味しそうっ」
見たこともない角付きの――鹿型の魔獣を狩ってきたり。
「今日は森の外で行商人を助けたのよ! そしたら――」
「うわー辛っ、匂い辛っ」
「――香辛料料理プリーズ!」
「ぶえーくっしょんっす、ちくしょー!」
香辛料を持って帰ったり。
と行ける範囲が今までと全然違うようで。
朝出たら、もう夕方まで戻らないのが普通になる。
そして帰って来たら――
「ただいまー! 元気?」
「元気よ。ほら、お姉ちゃんお帰りって蹴ってるわ」
と、ママさんのお腹に挨拶をする。
「今日はどこまで行って来たんだ?」
「んーあっち?」
「違うっすよ。あっちっす」
「――奥には行ってない」
「そうか、ならいい」
「ほら”お姉ちゃん危ないよ”って言ってるわよ」
子供に代弁させるようにお腹を揺すって見せる。
「大丈夫。お姉ちゃんつよいから!」
「こら」
「そうだぜ。奥に行けば魔物が強くなる。俺に手も足も出ないようじゃな」
「うー、強くなるもん!」
「強くなっても安易には行ってはいけない」
「なんでなんで?」
「森の奥は魔力が濃い。魔力が濃いということは強い魔物が沸くということ」
「フレアがもっと強ければいいんでしょ!」
「それに魔力が濃いということは魔物が沸く数も多いということ」
「――うへ」
「そして強くて数の多い魔物から逃げるのは至難の業だ。逃げた先に誘導しただけと言うこともありうる。今はカイトの塔で勝てる魔物だが。そうでなかったら?」
「俺とかノヴァで無理な魔物だったら終わりだぜ」
「うっ――怖いわね」
あの細い道は川――森の奥へと向かう道だ。
そして道は僕が選んで作った。
ノヴァもそれは知っているだろう。
だからノヴァの言葉は僕に向けられている――のかも知れない。
この先は危険だ。
だとしても僕は――
「じゃあ塩狩り探検隊しゅっぱーつ!」
「おー」
今日も遠くに行くフレアたちを羨むどころか、拳に力が入って見送る。
何故ここで停滞しているんだろう。
なんて思わずには居られない。
村は発展している。
建物もガラリと変わった。
屋根も壁も補修が済み、綺麗に整備された。
柵ももはや手作り感のない頼れる――壁に一歩近づいた。
道は均され、固められて、歩きやすくなり轍も目立たなくなった。
けど、この半年で進んだ距離は1kmにも満たない。
幾ら村を整えようと人は増える見込みはない。
幾らギルドハウスが完成しても出せる依頼も今はない。
幾ら大ヒルを倒し続けてもポイントが増える気配もない。
何度川まで行き、下流を眺めたか分からない。
強くなれない。
遠くに行けない。
外を見ぬまま時間だけが過ぎて行く。
この現状に対する焦り、それに地におわす女神が応えてくれたのか。
はたまた、森を侵略する行為に対する天罰なのか。
空は暗くなり、森は不穏に揺れ動き。
ひんやりとした、けど湿気て不快な風が呼び起こす荒天の予感。
つまり、嵐がやって来た。




