5-14
フレアの剣は長い。
上半身と角を足したより長い刀身を持つ――長剣と分類されるものだ。
だから鞘も長い。
腰に差したら地面を引きずる羽目になるので、背中に差している。
「ほんとにいーの?」
「おう、いつでもいいぜ」
フレアとミレイユが昼に対決となった。
場所は村で一番広い、ため池の近くだ。
勿論喧嘩ってわけじゃない
防具を作るため「動きを見せろ」と言うことだ。
「ほんとのほんとに?」
しつこく確認するフレア。
というのも、ミレイユが持っているのが大きなハンマーだから。
両手で使う用に柄が長くて、振り回すには向かなそう。
もっともミレイユの大きくて鍛え抜かれた身体なら扱えはするだろう。
けど、フレアは本物の剣を抜いている。
きっと何体も魔物を倒し、魔獣を狩って来ただろう剣だ。
だからしつこく確認する。
「ほんとのほんとのほんとに大丈夫?」
「殺す気でいいぜ。ま、それでも傷も付くわけもねえ」
「でも、危ないよ」
「はっ仮に傷付けられたら、武器の分の材料をおごってやるよ」
「ほんと?」
「ああ」
「ほんとにほんと?」
「そうだって。クドい! 来なっ!」
「へへっ、じゃあ――行くぞっ」
そういうとフレアは剣の先端を地面に置いた。
真剣な眼差し――瞳の赤みも増して少し怖い。
腰を降ろして、上体を屈め、今にも飛び掛からんばかりの構え。
「そう来なくっちゃな」
そう言いつつもミレイユは動かない。
どっしりとフレアを見ろしつつ、大きなハンマーを軽そうに肩に掛けて立つ。
ミレイユは割りと自己評価が低い。
二言目には”本職じゃないけど”と言い。
その癖いい仕事をする。
なのに今回は”傷つかない”とまで豪語した。
フレアは本職なのに。
フレアは戦闘に向く高い身体能力を持つ魔族だというのに。
その上、魔族でも上澄みの証である大きな角もあるというのに。
ミレイユは本職じゃないのに、自信が見て取れた。
恐らく相当な強さ。
それを裏付けるようにフレアも動けないでいた。
「フレアちゃん。がんば!」
「――ごーごー」
みんなの声援を受けても動かない。
「ふー、ビビってんのか?」
ミレイユが挑発。
その上、ハンマーもヘッドを地面に降ろして、手招きまでした。
フレアの眉間に皺が寄って。
身体に力が籠ったのが見えて。
――僕の顔に風が当たった。
「うぅーー! とお!」
「っとぉ、いいね。そうこなくちゃな」
目を開くと、既に決着。
剣は地面に刺さってフレアは前につんのめっていた。
「見えなかった――どうなったの?」
「――剣を横から――ばーんって」
「やっぱりミレイユって滅茶苦茶強いのね」
「あれで、本職じゃないなんて凄いわ」
大きなハンマーを降ろした姿勢だったはず。
そこから逆手のまま柄の部分で剣を払ったというなら。
確かにかなりのものだと思った。
「よーし、いいぞ。どんどん来い」
「ええーい!」
「ほうほう、なるほどなぁ」
「とお、とお!」
「あー、やっぱ足元が甘いぜ」
「わわっ! うわぁっ!」
フレアが切りかかるも避けられ続け。
逆にミレイユの蹴りで転がされてしまう。
「つ、つっよーい!」
「ははっ、年季が違うぜ。でも悪くなかったぜ。かなり早え。ただ、そればっかりに頼って足元お留守なことが多い。だから足払い喰らっちまうわけだ」
「なるほど。気を付ける!」
「うん、大体防具の方向性は決まった。次、ポリー来いよ」
「ええぇ、もう1回!」
「悪いが、今日中にどっちも見ときたいんだよ」
「そっすよ。順番順番!」
「えーでもぉ」
「ま、ギルド建てたらまた時間作るからよ」
「うー、はーい」
ポリーと入れ替わりにフレアが戻って来る。
「えー、もっとやりたかったなぁ」
「そんなに面白かったの?」
「うん! 強い人とやると色々できそーな気がするの!」
「そうなんだ」
「あと、ちょっとで何か技がこー頭の中で――つかめそーだったのに」
「技が――近接はそういうもの?」
正直僕に振られても分からず、首を振るだけ。
代わりに答えたのはノヴァだった。
「ふっ、そういうものさ。技と言うものは強敵との戦いの中で閃くもの」
「――買ったりしないんだ」
「基本的にはそうだな。技を伝えるとなるとかなりの達人でなければならない。金でどうこう出来ることではないな」
「へーお店で買える魔法と全然違うのね」
「というわけでフレア。パパとやろうか。暫くやってなかったろ? フレアも前より大分成長したようだしな。今ならパパの――」
「駄目だよ。パパじゃ」
「なっ、何故だ――フレア」
「だって攻撃してくれないし」
「あ――いや、それ――おぉおぉ」
足を止めるノヴァ。
「うわーフレアきっつ」
「ノヴァが膝を付くなんて――」
「――クリティカルヒット」
打ち抜かれたように尻もちをついて、座り込んでしまう。
少し可哀想――
そうは思っても、ミレイユ対ポリーの始まりに僕も目を奪われてしまた。




