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5-10


 水路は掘り出すことに決まった。

 ミレイユが道具の準備をするので一端解散し、いつもの仕事をこなす。


 昼過ぎに再集合。


「おーし、出来たぜ」

「はやーい」

「任せな。ま、性能は本職ほどじゃないけどよ」


 両手にシャベルやつるはしを抱えたミレイユ。

 すべて木製――けど、一本ずつ地面に突き刺して見せる。


「うわ、凄い切れ味」

「ここの土結構硬いのに」

「流石、頼もしいっすね」

「――これ以上って本職とは一体――」

「へへ、まあ使って見てくれよ」


 頬を赤く染め、鼻の下を擦るミレイユ。

 やはり職人だからか、作ったものを褒められるのは嬉しいのだろう。


「ではまず、村側から掘って行こう」

「掘り出した土ぁ俺ぁと相棒で運ぶ。適当に積んでおいてくれていいぜぇ」

「頼む」

「パパは硬いところをつるはしね」

「じゃあフレアが掘るー!」

「ああ、頼む。ただすぐに戦闘出来るようにな」

「うん!」

「ポリーは周辺警戒を頼む」

「うっす!」

「では掛かれ!」


 ノヴァの合図で作業開始。

 埋めた水路を掘り出す。

 ママさんが水路のあたりをつけた場所にシャベルを突き立てる。


 思ったよりも硬い地面。

 折れそうなシャベル。

 すぐに汗水は垂れて。


 夕暮れにはへとへと、手が痛くなって、腕も肩も背中も怠い。

 使ってなかった部位を使ったからか筋肉が悲鳴を上げる。


 この世界に来て初めて感じた充実感ある痛み。


 それでも、もやもやした気持ちは晴れないまま、その日を過ごした。




――夕食前


 広場に集まり少しの暇。

 その間に僕は宝玉の間に入って――宝玉を起動した。


『3pt』


 まったく使っていないポイントを見つめて考える。

 仮に女神の怒りに触れていたとしたらと思い。

 この先、何か怒る前にと悩む。


 そんな僕の背がつんと突かれた。


「うわっ!」

「カイト! 何してるの? うんうん唸って」

「フレアかぁ、びっくりした――」


 横にフレアが立って、下から僕を見上げていた。

 くりっとした大きな目で真っ直ぐ。

 目が合うと、頬を緩め、口角を思い切り上げて。


 屈託のない笑顔。

 眩しくて、上手く笑い返せないでいた。


「それってさー、何か変わる絵てさー、何が描いてるの?」

「うーん、絵――かぁ」

「うん、強くなるための、どう強くなるかの道しるべ見たいなものかな?」

「道しるべ?」

「何がどう強くなるかを決める」

「うんうん」


 フレアの顔は笑顔のままで、小首を傾げて頷く。

 何も分からないけど、取り合えず頷いているっていう感じだ。


「あーと、例えば、これを取ると射手塔の矢を撃つ間隔が短くなるんだ」

「ピュッピュッって撃つ奴?」

「そうそう、ピュピュピュっていずれなる」

「おー」

「こっちを取ると、矢の威力が上がる。ピュッって言うのが、ブオンってなる」

「じゃあ両方取れたら、ブオブオブオッってなるんだ!」

「うん、そうそう! その強くするための技能――かな? 技能をどれから覚えて強くなっていくかってのを決めるんだ」

「修行要らないんだ? フレアもこれあれば魔法剣使えるのかなぁ」

「どうだろうね。覚える数を増やすのに修行がいるし」

「そうなんだ」

「今のところ、ほら、ここの3って数字」

「これが、すーじ?」


 文字が読めない。数もか。


「あ、これが3ね」

「おーこれが3」


 指を三本立てて画面の3と見比べて「おお」と感嘆の声を上げる。


「じゃあどれにするの? 3つもあるんでしょ」

「まだ――使わないかな」

「まだ? 3つあるのに?」

「うん」


 ちょっと口を尖らせるように「なんで?」と聞いて来る


「待っててね」

「待ってる?」

「うん、まだ出てない技能があるんだ」


 今ある項目は全部じゃない。

 まだ全然足りないからだ。


 塔だって3種類しかない。

 大体タワーディフェンスゲームは塔だけでは戦わない。


 プレイヤー、この宝玉によれば魔術師の項目にあるはずだ。

 今は鎖が掛かったこのフードを被ったアイコンの向こうに。


「僕が戦えるようになる技能が――あるはずなんだ」

「こないだは斧で頑張ったんでしょ?」

「斧じゃあ――」


 正直体調の悪いママさんにも劣っていた。


「そういうのとは違ってね。例えばいん――石を振らせたり、雷を落としたり、兵士」

――戦う精霊を召喚したり――出来るようになるはずなんだ」


 けど、これらを手に入れれば――


「へぇ、空から! 女神様みたいだね」


 笑顔でそういうフレアにどきりとした。

 まるで僕のしようとしていることを当てられたようで。


 仮に、そう仮の話だけど――そうなるならば力がいる。


 巻き込まないように言うべきなのだろうか。

 領土のために犠牲にしてはいないだろうか。


「フレアちゃん、カイトちゃん――夕食出来たわよ!」

「あ、はーい、カイトいこ」


 フレアの屈託のない笑顔が眩しくて――目を逸らしてしまう。


「ほらほら」


 けど、手に引かれて広場に戻った。



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