4-9
すんなりとペルーサの承認が終わって――
ガーネットも躊躇うことなく登録完了。
「じゃあ私も、はいっと、これでいい?」
「うん」
「えーと、私を入れて7人よね? これって」
次のレベルまでの領民の数は6/10と出ている。
「あ、おっちゃんが――まだ」
「あー俺ぁは――なぁ」
「ああ、急ぎ必要はないしな」
「ええ、そう。そうよ。ほら、10人になる時にでも――ね?」
嫌がっている。
その上ノヴァとママさんが庇っている――ように見えた。
少なくともガーネットも同じように思ったらしく、怪訝に眉を寄せてる。
多分ペルーサも、フードの下で同じようになっているだろう。
「じゃーあと3人! あつめよー!」
けど、フレアの一言で流されて、その日は解散――床に着いた。
――翌日、もう恒例となったいつもの姦しい朝。
「おっはよー!」
「うぐっ」
腹に角が刺されば、昨日のもやもやもどこへやら。
「あらー大丈夫?」
「――いたそ」
ペルーサももう慣れたもので、こんなことでいちいち回復してくれない。
顔を洗えば丁度ポリーが食事を運んでくる。
いつものようにみんなでテーブルを囲んで、3人での食事が始まった。
「そういや、ずっとここで食べてるけど」
「テーブルがねぇ」
「――そうそテーブルが」
「作ろうか? そろそろ木に余裕が出来てきたし。上手くできるか分からないけど」
あった方がいいはず――そう思って聞いてみたけど。
2人の反応はいまひとつだった。
「えっ、いいよいいよ。悪いし」
「――いらない」
「大丈夫だよ。ほんとに余って来たからさ」
「いいのいいの。夜は広場で食べるんだし。朝はここで――ねぇ?」
「――うん」
「またまた遠慮しないで。作ってみるよ」
何だか必死に「要らない」と連呼する2人。
だけど、テーブルがあって困ることはないだろう。
僕は日課に木工を加えることにした。
とはいえ朝食をとって最初にやることは見回りだ。
まずは屋根の上の塔、それと塔の台座のチェック。
一週間かけて全ての建物の屋根の上には台座を作った。
現在塔があるのは宝玉の間とノヴァの家の2つだけだけど。
いつでも他の家の上にも塔を置けるようにしてある。
だから毎朝チェック。
いざと言う時に使えないでは困る。
朝、4人の出立を見送る。
梯子を持って家を出ると、まずは宝玉の間の屋上に登った。
「よし、大丈夫だな」
塔自体は塔の精霊の顔つきで大体わかるし、今なら感覚で状態も分かる。
けどノヴァ曰く「目視で確認しておいたほうがいい」なので指差し確認。
台座も問題ない。
軽く揺らしてもびくともしない。
次はノヴァの家――問題なし。
そこからはぐるりと反時計回りに村を一周していく。
だから次はガーネットたちの家。
「うわっと。あっぶな」
大きいし、背も高いので梯子が上まで掛かり切らない。
玄関のポーチ的な部分の屋根から上に登っていかないといけない危険な家だ。
最大の難所も無事攻略。
「次はおっちゃんの――家?」
家というか馬小屋だ。
何せ壁が下半分しかない。
一応ゴブリン対策で、しゃがめば隠れられるって程度。
人が住む場所ではない。
村に立ち寄ってただで寝床を借りる。
そういう話に出て来る馬小屋だ。
「――考えても仕方ないか」
ひとまず仕事だ。
そのまま僕の家の上まで一息に終わらせる。
使い終えた梯子を仕舞い込み、次は畑に向かう。
次の仕事は柵のチェックだ。
「おはよう」
「はい、おはようカイトちゃん」
「おはよう。カイト。フレアたちはもう行ったか?」
「うん、今日も森だって。ボアをもっと狩るって息まいてたよ」
「ふっ楽しみだ」
木材に余裕が出来てからというもの、ノヴァも朝は畑にいることが多い。
といっても大抵は水の運搬だ。
僕くらいある大きい甕を肩に担いで右手で支えて歩く。
多分重さにしたら村の人全員分くらいになりそうだ。
それをグラールに頼むまでもないと言って自分で行う。
何往復もして、村の共有の更に大きい水甕に溜めておく。
井戸とか、水路は規模の小さい村では魔力溜まりになって危険。
今は僕の領土内なら安心だろうけど。
今度はそれを出来る職業が居ない。
つまり金が必要。
フレアが張り切っているのは金のためもあるのかもしれない。
「よし、柵も問題なし」
「どう? カイトちゃん」
「大丈夫そうです。畑はどうですか? 踏み荒らされた形跡とかは」
「ないわよ。万事順調! 良く育ってるわ」
「良かった」
達成感。
「じゃ、ちょっと休憩しましょっか?」
「あ、はい」
これも恒例の行事。
大体畑の柵を見ていると昼近くなっている。
ただは冒険者でもないし、村人に昼食はないらしい。
といっても力仕事をしたりするわけで、腹は減る。
「はい、イグさんが採って来てくれたのよ」
ママさんから渡されたのは赤や青に色付いた味。
豆ほどの大きさの丸いベリーだ。
片手一杯に貰ったベリーを一気に口に放る。
奥歯で噛み潰して汁を絞り出した。
「うわっ、うぅすっぱぁ」
「本当好きね。一気に食べるの」
「うん、これがいいんだよ」
かつての世界の果物と違って、この世界の果物はそこまで甘くない。
酸味が強かったり、時にえぐかったりもする。
多分品種改良がなされてないんだと思う。
けど、ここのは美味しい。
いや魔味しいかな?
「強い酸味を味わって――段々と消えてく余韻の中で魔味が一際立つっていうか」
「まぁ! 素敵! カイトちゃんいいわっそれ! えっもう一度。いやパパも呼んで聞かせましょう! ええ、そう。フレアちゃんも――いえ詩にして――」
まあ何かこうたまにスイッチが入るのも慣れたもの。
少し恥ずかしいだけだ。
昼休憩を終えたら、今度は木に立ち向かう。
同じくどこかで休憩をしていたおっちゃんと広場で合流だ。
工具と木材を並べて2人で頭を捻った。
「柵よし、台よし、屋根もよし。おっちゃん。何か木が必要なことない?」
「おぉ、んー馬車は――大丈夫だよなぁ。あーじゃあねぇな。角材にしてくか?」
「あ、出来れば作りたい物があるんだ」
「おん?」
「ガーネットたちのテーブル。無いらしいからさ」
「あーテーブルねぇ。難しいぞ」
「難しいの?」
今あるのは細い角材と、輪切りの丸太。
天板にする板の切り出しが――難しいのかと思った。
「足がなぁ。俺ぁじゃできねぇぞ。ノヴァも多分無理だ」
意外な箇所が難しいらしい。
「まあやってみようよ」
「そうだな。経験を溜めればいつかぁできっかもしれねぇしな」
「うん」
と意気揚々と返事したけど。
「全然立たない――ね」
「いったろぉ? ま、木なんざ無限にあるわけでチャレンジってことさ」
「うん、次だ」
何度も木を削っては足を宛がってみるも。
どうしても自立してくれない。
重心か、足の強度か。
何が駄目かも分からないまま――気付けば陽が傾いて来た。
「陽が傾いてきたぁなぁ」
「あ、うん」
「また明日ぁだな。ほら来たぜぇ」
「そろそろ夕食の準備するわよー」
ママさんの一声で夕食という一日の締めが始まる。
それがここでのこの村でのいつもの暮らしだ。




