4-7
僕はまだ強くなれる。
そんなことはずっと思っていたことだ。
だけどこうして確実な道を示されるとやっぱり違う。
胸がドキドキして心臓は痛み苦しむためのだけの物じゃないと分かる。
それが最高に楽しい。
「じゃ割り振るのか?」
「保留しようかなと思ってる。今のところ困ってることはないでしょ?」
「まあ、ボアに効かなかった――くらいか?」
「それは――まあ。でもそんなに出ないんでしょ?」
「ああ、まあそうだな。矢でボロカスにされて食いづらくなってもあれだしな」
「うん、だから何かあった時用に取っておくよ」
それから僕とおっちゃんは伐採に参加した。
勿論柵と塔を置く台を作るための木を早く欲しい。
ただ相変わらず僕じゃ木に斧を食い込ませることすら出来なかった。
ノヴァほどじゃないにしろ、おっちゃんの斧はしっかりと木を削っている。
おっちゃんは痩せぎすで、僕より力がないはずなのに。
「何、その内伐れるようになるさ」
「俺ぁより身体はしっかりしてっからな。経験だよ経験」
「俺も最初は全然だったからな」
「ええ、意外」
「ふっ、ポリーくらいの背丈の頃の話だがな」
「うっ――そのくらいの子と比べられるくらいなんだ――」
たわいない話をしながらも、ノヴァは力強い。
ほとんど右手しか使っていないはずなのに、ガンガンと斧を打ち付ける。
見る見る内に幹が削れ、飛び、溝が深くなっていく。
結局、ほとんどノヴァ1人の力で木を伐り倒した。
僕らはそれを運ぶ――ことも出来ず、グラールに引いて貰う。
「ま、結局適材適所ってわけ」
「うん」
僕とおっちゃんは木を伐るのを一端諦めた。
今回は屋根の補修と、塔の台に使うから――木材にしなければならない。
それがまた大変で、1本の木を木材にするのに2日仕事だ。
最初は枝を落とす――だけど、これすら2人ががりで使う大きな鋸じゃなきゃ刃がたたない。
伐り倒す時より大分マシとはいえ、僕らには地獄のような作業だ。
「おら、声だしてけ! おい!」
「えっうん!」
「おい! だよ、おい!」
「そ、そうなんだ」
「おい! ほら」
「お、おい!」
「おい!」
「おい!」
声に合わせて引いても中々切れない。
太い枝を落とそうと思ったら、へとへとになる。
声も枯れるし、手も固まったみたいに動かせなくなる。
「やっと――出来た」
「疲れたかぁ? だがまだ丸太になっただけだぁ」
そうまだ途中だった。
何故なら今回は木を屋根の補修と、屋根に台を作るから。
つまり木材にしなければならない。
まず、楔を穿って、それをハンマーでぶったたくという方法でやるらしい。
丸太は木の繊維にそって縦に裂けていく。
細長くなった丸太を削って成型したら、角材になるという寸法らしい。
どうみても力作業。しかも半端ない力を求められる。
未だかつてないパワーを、既に120%使っているというのに。
果たして僕らに出来るのか?
おっちゃんもずっと肩で息しているし、顎から汗が垂れていく。
何だかこの短期間で頬がこけたようにみえるし、自信もない表情。
そんな中――救世主が現れた。
「あーそれフレアがやるー!」
「ちょ、フレアまっ――うわっ木がある」
「――は、早い――よ」
「おーやってるっすね」
「あれ? みんなどうしたの?」
「ぜんぜん、魔物居なくてつまんない」
「あ、さぼりじゃないっすよ。周辺は見て来たっすから。ちょっと――ちょっとだけ休みたいっすねーって話をしてたっす」
「そうそ、すぐ、見回りに戻るから」
「――み、水」
それはもう大変な見回りだったのか。
ガーネットとペルーサは愚かポリーもお疲れ気味だ。
「いや、むしろゆっくりしていって。お陰で希望が持てたしね」
「だなぁ、フレア頼むぜ」
「やった! これ好きー!」
「何するの?」
「木を裂くんでぇ。これでぶっ叩いてなぁ」
「僕らの力じゃちょっとね――」
「――力居る?」
「そりゃあれば――あ、お願いしてもいい?」
そういえばペルーサはバフを使う人だ。
「――うん、余ってるから」
ペルーサが手を掲げ「金剛力」と唱える。
すると身体中が内側から張るような感覚があった。
血管がはち切れんばかりに怒張して――熱い。
まるで茹る熱湯が流れたようだ。
「おおおぉぉっ!」
自然と声が出る。
それくらい心地よくあった。
これが魔力が体内に充満するということだろうか。
「なんだこれ! 力が! 漲って来た!」
「よーし行くよー!」
楔を交互にハンマーで打ち付ける。
大きく飛びあがりながら打ち付けるフレアの一撃。
僕も負けないくらいの威力が出ている。
「カイトやるー!」
「凄い、凄いよこれ」
「――ぶい」
大幅に上がった力によって木に簡単に亀裂が入った。
叩けば叩くほど繊維が左右に千切れ、ばりばりと音を立てて、縦に裂けて行く。
裂けることは裂けた――けど、残念なことに綺麗には裂けなかった。
横にずれたり、裂ける場所が逸れたり。
短くなりすぎたり、細くなりすぎたり。
そんな歪な木材が切り出されてた。
これが職業の技能があれば違うのだろう。
経験では補えない才能という奴をまた感じた。
そうこうして3日目。
ようやく切り出した木材を更に成型。
角材にしていく――のだけどここはおっちゃんが担当。
そして翌日、ようやく屋根の補修と塔を置く台に取りかかる。
「よし、これでいいだろう。それでこれは何なんだ?」
「ああ、うん。塔を置く台だよ。高い位置にあれば狙える場所が増えるでしょ?」
「射線を広げるため、獲物を狙うための――なるほど、では名はアイオブザ――」
「うん見張り台の完成だね!」
さしたる障害もなく、無事完成だ。
その日の内に畑の外側を柵で覆うのも完了。
そうすると木を角材にする必要もなくなった。
多少は補修用に取っておくにしても、大半は丸太の状態で宝玉の間に保管。
ストレージに弾として置くだけでいい。
見張り台に置いた塔も、少なくとも今まで通りには機能している。
期待通りに行くかどうかは、また大軍でも来ないと分からないけど。
多分大丈夫だろう。
そうなると暇になったのは真紅の夜明け。
暇で仕方なくて遊びたいフレアと、強くなりたいガーネットと、食に対する探求心を満たしたいペルーサの思惑が合致した。
「ボア狩り探検隊だー! いくぞー」
「――うんっ!!」
「あまり遠くに言っちゃ駄目よ」
ボアはそうは居ないからか。
ギルドの支給品とはいえ装備があるし、今は4人のパーティだからか。
まるで近所のお使いのように送られて4人は旅立った。
といっても朝出て、昼に戻って来て、また旅立って夕方に帰ってくる。
その程度だからそこまで遠くには行けていない。
「ボアがそう簡単にいるかよ」
「見つかったら助かるけどねぇ」
「いい経験になるだろう」
元々、3人はそんな感じでボアそのものには期待せずいた。
けど、ボア狩りに出て3日目。
その日は昼の出発の後――すぐ戻って来た。
「イグ! グラールを借りたいっす!」
しかもポリーが1人でだ。
慌てた様子で息を切らせて、おっちゃんに飛びつきよじ登る。
「どうしたっ?」
「ボアを仕留めたっす!」
どうやら本当に狩ったらしい。




