表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/72

4-6


 宝玉が失われたら、この村はどうなるだろうか。


 今までの分を取り戻すように森に飲まれるのだろうか。

 そうならなかったとして、畑は維持できるのか。

 やり直ししたとして、行き成り領土の大きさはどうなるのか。


 何をどう考えても――良いことは起こらないのは確実だ。


 なら出来得る限りのことをしなくては――


「そいつぁ、村の地図か?」

「うん」


 僕はしゃがんで地面に指で溝を掘って地図を作った。


 村の外周は木に囲まれ、細い道だけが内側への道。

 建物は大小合わせて6つ。


 村の入口側には2件の家と小屋が一つ。


 入口付近の小さい小屋――馬小屋みたいなところがおっちゃんとグラールの家。

 その隣のそれなりに一番大きい家がガーネットとペルーサの家。


 村の中央には宝玉の間――ここも大きい建物だ。

 その前の森側に開けた広場は集まって食事を取る時の場所だ。


 森側には僕の住んでいる場所とノヴァたちの家の2つ。

 ノヴァの家の裏は少し開けていた。

 今は更に畑もあって村が二倍近く広くなったといっていい。


「こうして見ると広くなったなぁ」

「そうねぇ」

「川ってどこの辺り?」

「この辺りかしら?」

「ああ、そうそそんくらいだろな」


 ママさんが手を伸ばして線を引く。

 僕の住む場所の方――村の横から伸びて、入口の丁度正反対へ伸びて行くようだ。


「川じゃ無い方って言うことは――畑の奥が多いんだ」

「なのよ。だから前は守れなくて」

「食糧は基本的に畑から?」

「いえ、前は確かにそうだったけど」

「じゃあボア?」

「んなボアは頻繁にこねぇよ。来たら今頃大金持ちだぜ。大体は金で買って来てる」

「豆なんかは森の中に生ってるの」

「じゃあ畑が無くても暮らせるってこと」

「金があればな。ボアは月に一回もこねぇこともざらだからなぁ」

「畑は守らないと駄目か」

「だな。生きて行くにも。人を集めるにしても。畑は必須だ」

「いい売り物になるわよ。辺境の小麦は」

「そっか――後、こないだのゴブリンの大軍は頻繁にはないんだよね?」

「流石に滅多にないわ。あの日の前に大雨だったから」

「あーそういや降った形跡があったな」

「じゃあ、ゴブリン以外の魔物は?」

「この辺りじゃ出ないわ。もっと奥に行けばいるけど」

「そっか――」


 整理しよう。


 基本的に来るのはゴブリン。

 それも散発的にで、大抵は畑の奥から。


 これだけなら今の形で守れている。

 この1週間問題なかった。


 けど来た時みたいに大軍だったら。

 ボアも居たら?


 大軍には柵でいい。

 最初ノヴァが置いたみたいに、柵で行動を制限できる。


 ボアは宝玉の間の壁を破って来た。

 なら簡単な木の柵じゃあ――駄目だ。


「一杯木があれば強い壁も出来るかな」

「そりゃ無理だぜ。ノヴァでも1日1本を毎日ってのはきちぃと思うぜ」

「フレアが手伝っても――最初はねぇ」

「まあなぁ、これまでやらせてりゃ多少は違ったんだろうがなぁ」

「今まで手伝いとかはしてないの? やりたがりそうなのに」

「させてねぇな。森にはいらねぇといけねぇし。それに伐ってると魔物が沸くだろ」

「そう――なんだ」


 僕の知らない世界の常識。

 だから依頼なんて形を取らなきゃいけない。

 だからノヴァも護衛を頼んでいたんだ。


「ま、木が大量にあっても強い壁なんてできねぇよ。それ専門の職業よばねぇと」

「そっか――そうだったね。僕らじゃ駄目なんだ」

「ふふっ安心して。作物が出来たらなんとかなるんじゃない?」

「ああ、俺ぁが金に変えてくらぁな。そしたら人を雇えばいい」

「そういうのもあるんだ――」

「なんのためのギルドだよ。金ありゃこっちから依頼出せるんだぜ」

「そっか、受ける方しか考えたことなかったな――じゃあ今はこうしよう」


 僕は勢いよく指を滑らし、地面を掘った。

 おっちゃんとママさんが興味深そうに見入る。

 けど、僕の指がすぐ止まると不思議そうな顔で同じ言葉を口にした。


「これだけ?」

「うん、これだけ。節約していきたいと思ってね」


 村の地図に柵の線を書き込んだのは畑の外周だけ。

 それも囲いにはせず半円状に森側だけをだ。

 他のところは柵がないから、当然村側からなら出入りは楽勝。


「畑を踏み荒らされなければいいってことかぁ?」

「そうだね。本格的な柵作りは人を雇ってからでいいかなって。どうせ今の柵じゃあボアには意味がないだろうし」

「でも畑の向こうじゃない――他のところからも来ることあるわよ」

「それは塔に処理してもらう」


 僕は畑を見ているノヴァの家の上の射手塔を指差す。


「つってもよぉ。あれは畑くらいしか見えてねぇだろ」

「だから射線を通すために塔を置く台を作ろうかなって」

「台?」

「屋根の上に?」

「うん、柵を作るより効果的かなって。塔を建てられる本数も限られてるから」

「そういや何本だ?」

「感覚的にはあと今は2本建てられるはず」

「感覚なの? あの、何か操作してた奴で分かったりはしないのかしら?」

「レジーナ――んな簡単に行くわけねぇって」

「あら、じゃあ飾り? 確かに――格好いいけど」

「飾りじゃなくて――あ、いやそうだ。忘れてた! それだ!」

「えぇおい!」


 すっかり忘れていた。

 そもそも宝玉とは何か。

 ただの守るための飾りじゃない。


 急いで走って宝玉の間に入る。

 スマホに近寄り宝玉に変形。

 その間も惜しいくらいで、もう玉部分が出来上がった状態から手を伸ばした。


「やっぱり」


 変形し終えた宝玉の表面には見覚えのある画面――ゲームの画面だ。


 画面には村を上から見たマップが映されている。

 精巧で、恐らくこの世界にはない技術で非常に貴重なもの。

 ノヴァの空けた屋根の穴すら見える。


 でも僕の目はそこではなく、下側に釘付けだ。


 1週間前、村を発つ前にはそれはなかった。

 でも今は違う。

 新しい塔を出せるようになった。

 つまりそれはチュートリアルが終わったということ。


 チュートリアルが終わればゲームの開始だ。

 ゲームが始まればチュートリアルでは使わない要素が順々に解放されていく。


 画面に下側中央にそれはあった。


 石のハンマーの描かれた丸いアイコン。

 上から被さるように書かれた文字は――


 『アップグレード』だ。


「ああぁ、やった!」


 少し手が震えて、アイコンを2連打してしまう。

 けど無事に、地図の上に下からパンした新たなポップアップ画面が現れた。


―――――――――――――――――――――


       マスター


       ドミニオン


       タワー


―――――――――――――――――――――


 そこには3つのボタンだ。


「よし! よしっ!」

「おおいぃ! はええよ。何で急に――」


 僕はそれには答えなかった。

 聞こえていなかった。

 いや耳には入っていたけど、理解しようとしなかった。


 楽しみだった――目の前に現れた情報に熱中していた。

 初めて転生を理解した時、初めて塔を生み出した時。

 それらと同じくらい今わくわくしている。


 『タワー』のアイコンを押して画面が変わる。

 そして変遷した画面には更に『射手塔』『投石塔』『魔法塔』の3つのボタン。

 その内の『射手塔』を意気揚々と押した。


―――――――――――――――――――――


 ?? ← ?? ← ?? ←

              ↑

                威力上昇

              ↓

 ?? ← ?? ← ?? ←


―――――――――――――――――――――


 見慣れたツリー式の強化項目がそこにあった。



「おお、何か動いてんじゃねぇか。どうなってる? 大丈夫なのか? おいおい」

「やった! やったよ。おっちゃん」

「めでてぇってことなのか」

「そうだよ。だって――」


 僕は画面の左下に目を移した。

 そこには『Pt』の表記。

 そして『Pt』は現在『1』ある。


 この1のポイントは割り振れるということだ。


 それはつまり「強くなる」ってことだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ