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3-14


 ギルド内部では酒が飛び、人も飛び、料理も飛ぶ。

 酒を流し込み、料理を頬張り、怒号のような嬌声と悲鳴のような笑声でギルド全体が揺れているようにも思えた。


 勿論こんなのは冒険者には序の口の騒ぎで。

 ひとしきり腹を膨らませた後に待っているのは更なる熱狂。


「踊れぇぇ!」


 中央のテーブルはさながらお立ち台。

 上って踊って、取り囲んだ人たちも踊る。

 更に高まる熱気で汗も吹き出すものだから――


「脱ぎます!」


 脱ぐ人も――流石に上だけだけど。

 ともかく台に上がって踊って、脱いで。


 それに参加しないで、肴にして飲む人たちも。


「あはは! たのしーねー!」

「そうだね」


 僕たちもそう。テーブルから離れずに飲み食いを嗜む。


「冷めてるっすね。カイト、飲み足りないんじゃ――うぃっく」

「まあちょっとね」

「ちょっとぉぉ?」

「ポリーは飲みすぎだよ。コップの大きさ考えないと」

「村じゃ飲めないっすから――今日くらいは――うっぷ」


 酒が好きな人の気持ちは分からない。

 このブドウ酒のような酒と、多分ビール的な何かのどちらも好きな味じゃない。

 ブドウ酒はえぐみが残っているし、ビールの方は炭酸が抜けているし。

 それになにより――魔味が足りない。


 あのボア肉のせいで大分味覚が代わってしまった。

 あれ以外で美味しいと感じたのは人気屋台くらいだ。


「でも、ほら少しはセーブしないと。吐いたら勿体ないでしょ」

「吐いてからが本番だよーほらほら!」

「あー、もうフレアぁ。ほらポリー大丈夫??」

「――っす」


 もう何を言っているのかも分からない。

 テーブルにもたれ掛かって頬が潰れてぺっちゃんこ。

目ももう閉じそうになっている。

 そんなポリーが突然緑色に光った。


「――大丈夫?」


 ペルーサの魔法だ。回復で酔いが覚めるのだろうか。

 当然、ガーネットも一緒だ。


「3人ともちゃんと飲んでるみたいね。ちょっといいかしら?」

「いいよいいよ! 飲んでるよー」

「ああ、どうぞ」


 少し上気し紅潮した頬の2人。片手に持ったコップを置いてテーブルに付く。

 飲み過ぎたのか、中央のノリが会わないのか、ただ今日の挨拶に来たのか。


 という予想とは違って2人とも真剣な顔つきで椅子に座った。


「そのパーティのことなんだけど」

「――できれば」

「続けたいの! お願い!」

「――します」


 もう解散と思ったら正反対の言葉が出て来た。


「それはこれからも一緒にやっていきたいってこと?」

「うん、やってみて分かったわ。ギルドマスターの言う通りだって。私たち2人じゃあんな早くゴブリンは倒せない。それに再配置りぽっぷから逃げ切れたかどうか――」

「――楽しかったし」

「うん楽しかったねー!」

「だからお願い。また組んで欲しいの」

「――駄目?」

「んー駄目というか。冒険者をやりたいの? ギルドで依頼をこなしてお金を稼いで生きて行きたいっていうなら――」

「駄目なの?」

「――無理なんだよ」

「ええっ!」

「なんでフレアが声上げるの。村帰るから冒険者って形は無理だよ。それともフレアは村を出ていくの?」

「やだやだっ。村にいるもん」


 ポリーも倒れたまま力なく首を横に振って否定。


「――そう、なの」

「でも、冒険者じゃなくて。捨てられたことを強くなって見返したいっていうなら。多分かなりいいと思うよ」

「うん、いーよいよ! 村の周りなんて森しかないんだから」

「森――しかっ?!」

「辺境の”最果て”だからね」

「ゴブリンはほとんど毎日襲ってくるっすよ。それに魔獣――ボアもっぷっ」

「ボア?!」

「おいしーよ!」

「――美味し!?」

「だけど勿論リスクも多い。村人もほとんど逃げたような村だしね」


 ガーネットとペルーサは目配せで相談。

 ”森”という言葉の反応を見るといかに厳しい環境か思い知らされる。

 駄目かもしれないと思ったけど――


「じゃあ空き家はあるのね! ペルーサ」

「――うん、たべ――行きたい!」

「じゃあ、村に来るっすね!」

「やった! 仲間だ! やった! よーし、皆コップコップ! 酒酒! ほらカイトも持って」

「よーし、お酒持った?」

「うん、乾杯?」

「んーん、かための盃!」

「何それ?」

「パパが言ってたよ。魔族が仲間を作る時にする儀式りちゅあるなんだって」

「り、りちゅある?」

「大丈夫だよ。怪しくないと思うよ。魔族のノリだからね」


 どうやら2人も魔族のノリは知らないらしい。

 そういえばここにも居ない。

 まあノヴァたちだけかも知れないけども。


「じゃあ新生真紅の夜明(スカーレット・ドーン)けに――ちがうな」

「違うの?」

「新生、じゃないってゆーか」

「拘るんだ――」

「一度別れてまた合流」

「新生で良くない?」

「うーん、新生、再誕、回帰、違うなぁ。何かもっとこう――うーん、いっそ――」


 なんでこんな語彙だけ多いんだろうか。


「ああ! これだぁぁ!」


 1分ほど考えこんでフレアの顔が晴れる。

 実に素晴らしいネーミングが思いついたのだろう。


「よし、皆構えて!」

「えっいいの?」

「――ほい」

「まだ飲むっすかね?」

「ほら、カイトも」

「ええ僕も」

「メンバーでしょ! ほら」


 脇で見ていた僕も当然数に入っている。

 少し照れ臭いけど、皆と同じようにコップを掲げテーブルの中央で構えた。


「再び我らを集わせてくれた女神様と」

「女神様と」

「我ら真紅の夜明け(スカーレット・ドーン)フェーズ2の仲間に!」


 ”フェーズ”ってまた凄いの思いついたなぁ。

 と思いながらも僕も一緒になって思い切り床を蹴る。


「乾杯!」


 コップをテーブルに叩きつけて、沢山酒を零し――

 一気に酒を空にした。




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