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3-6


 再びジャンヌさんに連れられて訓練場に向かう。

 今度はガーネットとペルーサと一緒に、ただ黙って歩いた。


 空気を読まずに会話を振りそうなフレアやポリーにも頼れない。2人は次の試験と聞いてはしゃいでいてそれどころじゃなかった。


「よーし、ついた。ほらほら、どいてどいて。悪いけど、また空けて貰うよ」

「えぇ」

「また?!」

「んー文句あるのかな?」


 ぶつくさと文句をいうもジャンヌさんの一睨みで去っていく。

 空いた真ん中に居座るのは何だか悪い気がした。


「じゃあカイト君はそっちの参謀ね」


 そんな僕に気を使ったのか。ジャンヌさんは試験に巻き込んでくる。


「参謀?」

「うわー軍師! かっこいいよカイト!」

「お似合いっす!」


 そう持ち上げられてもなんだか複雑。

 けど「ありがと」と答える他なかった。


「それじゃ作戦タイーーーッム!」

「待ってください。何も分からないですよ。説明を」

「ええ? 試験の相手って言ったでしょ?」

「いや、言ってないです。まあそうだろうなとは思ってましたけど」

「えー? カイト君の聞いてなかったのー?」

「いえ、ギルドマスター。確かに」

「――言ってない」


 ガーネットとペルーサの2人も。

 ついでにフレアとポリーも手を上げ飛び跳ねながら。


「聞いてなーい」

「っすよ!」

「あ、マジ? あーまたセーラにどやされちゃうなぁ。まあ、今回は2対2で戦って貰うよってことで。作戦ターーーー」

「他に条件は? 多分ありますよね。危ないですし」

「あーんー説明いるかー」

「ギルドマスター私がしましょうか?」

「よし! あーんーそう君頼んだ」

「ガーネットです」

「うん頼んだ」


「2つ目の試験は既に冒険者として活動している者と戦います。仰る通り危険なので武器は木製で急所は無し。魔法も威力を抑えて行使します。また公平を期すため戦闘開始の合図があるまで、魔法や技のためはなしです――ルールはこのくらいです」

「開始の位置は? 近すぎると近接に有利だし、遠すぎれば逆になりますけど」

「私たちの時は、こことあそこくらいです」


 ガーネットが指差した2か所は自分の後方と僕の背中。結構遠い。

 この広場の端と端で、20mはある。


「結構遠いな――」

「おお、軍師っぽいっすよ」

「腕組みしよ! カイト、考える時は腕を組んで顎か額に手をやるんだよ!」

「うん、考えさせてね」


 と言いながらも頭に手をやった。

 普通に頭が痛くなったからだ。


「それで決着は?」

「お姉さんが決めます。お姉さんが絶対です」

「お姉さん――?」

「んー何か?」

「あ、いえ」

「今疑問を持ったよねぇ。君ぃ?」

「いえ、その――特に何も、ありません」


 ガーネットの上から覆いかぶさり威圧するジャンヌさん――の横でフードから覗くペルーサの小さな青い唇が『無理』と動いていた。


「お姉さんでしょうが」

「は、はぁ」

「リピートアフターミー。お姉さん」

「お、おば――」

「はぁ?!」

「あ、いえ、その、それより試験を――あまり占有してますとセーラさんが」


 意外と度胸あるガーネット。目を逸らして、上から押し潰されたように腰を屈めてそれでも――結局お姉さんとは言わずに始めさせることに成功した。


「ちっ、分かりましたよ。やりゃいいんでしょ、やりゃあ、じゃあ作戦ターイム!」


なんでそこが譲れないのかは分からないけど。


「わーい作戦ターイム!」

「どうするっすか、参謀!」

「どうしようか。2人はどうしたい?」

「ふっふっふ、作戦オペレーションフェニックスで行くよ、ポリー!」

「っすね!」

「んーまたそんな。なーにそれ?」

「やられてもやられても立ち上がる。不死鳥のように! 死なないの! 相手が参るまでやるんだから」

「それでノヴァにも勝ったっすよ」

「そっかー大変だったねぇ」


 ノヴァに同情――まあ喜びそうでもあるけど。

 ただ、真剣に作戦としては不味いと思った。

 何故なら――


「木の武器を使って、魔法もセーブする。それでジャッジも居る。多分、普通の武器を使ったらどうだったかを一撃毎に査定するんじゃないかな。あの攻撃なら骨折したとかあの魔法は普通なら焼け焦げて動けなくなったとか」

「あ、じゃあ、一定のダメージ喰らったってなったら終わりっすか」

「そうだね。頑丈さはウリに出来ないと思う」

「じゃあどーするの? 勝ちたいよ! 塔のお軍師カイトお願い!」


 なんか変な2つ名ついてるけど、今は置いておこう。

 本当に勝ちたいようだから。


「うーん、相手は格上だし。戦いは一度見たけど。大体フレアとポリーもどれくらいやれるのか正確には分からないし」

「強いよ!」

「ゴブリンとタイマン張れるっす!」


 そう言われても分からない。

 2度の人生を合わせても成人したての人よりも経験も知識も僕にはないんだ。


 作戦と言われても、出て来るのはゲームとネットと本で得た知識くらい。

 それでも何とかした。

 勝たせたい。


 そう考えていると、頭の中で火が灯ったように明るさが弾けた。


「あ! 2人はもう元気? 痛いところとかはない?」

「ないよ」

「あれだけ飲まされたっすからね――万全っす!」

「うん、良かった。今まで僕が荷物を持った駆け出しの冒険者と比べて、2人の身体能力は高いと思う」

「鍛えてるもん」

「っす!」

「相手の2人は魔法職。そこまで身体能力は高くないはず。かなり鍛えていてもね。仮に血反吐出るまでやっても。剣の稽古以外何も教えて貰えない生活をしていても、2人より強くはないはず――だから速攻で行こう」


『兵は巧遅より拙速を尊ぶ』


 僕が唯一知っている兵法が思いついた。


「はーい作戦タイム終了。武器を選んで位置について」

「おっと、じゃ言った通りの武器を持って来て」

「うー、しょうがないなぁ」

「いってきまっす」


 フレアの手には木剣。

 ただしさっきより短い物で、動きやすさ重視。本人は嫌がったけど。


 ポリーは飛び道具を提案されたけど、今は要らないと判断して同じく槍だ。

 動きやすさと、小さい身体のリーチを考慮したらやはり最適解と思う。


「じゃあ、カイト君は下がってるように。他の皆も巻き込まれないでね」

「ほーい」

「やっと始まったぜ」


 駆け出しの冒険者も戦闘は一種娯楽なのか。

 皆稽古の手を止めて観戦モードで、並んでいた。


「ほんじゃ、見合って見合って――ゴーーーッ!」


 掛け声かかる。

 ほぼ同時にフレアとポリーは駆けだす。


「いっくよー」

「いくっすよー」


 予想以上に早い。

 鉄から木に変わったからか。さっきより早くなっている。

 足元からは砂煙が上がるほどの勢いで、二手に分かれて強襲。


「ちょっ早っ! 早いんだけど!!」

「――はいはい」

「早くペルーサっ」

「――いくよ金剛力」


 ただ、ペルーサの強化付与も早い。

 到達する前にガーネットの身体は薄い金色の膜で覆われ、迎撃準備を取られる。


「いくよー! プロミネンス――斬りぃぃぃ!」

「舐めないでっ!」


 怯まずフレアは斬りかかった。

 何故か技名を叫んで、何故か思い切り勢いを殺して上に飛びあがって。


「隙だらけよ」


 杖で剣の横を叩かれる。

 空中の不安定さとフレアの握力の強さと、強化付与の筋力の向上のお陰か、フレアの小さな体は真横に吹き飛んでいく。


「うわー」

「頂きっす!」


 吹き飛んでいくフレアと入れ違いに反対側からポリーは肉薄。


「――危ない」


 何か魔法を唱えようとしていたのを中断して、ペルーサは身体を槍の前に晒した。


 それに対してポリーは咄嗟に槍で払わなければならなかった。

 恐らくあのままなら、刺してしまっていた。木製とはいえ槍の切っ先は鋭い。

 腹に刺さり兼ねない。大けが必至だっただろう。


 だから槍を一瞬引かなくちゃ駄目だった――で隙が出来た。


「ファイアボール!」


 倒れこむペルーサの背からは炎の球。

 槍を刺そうとして、槍を引いて、槍を払って。

 更にもう一つ反応して行動しろというのはポリーでも無理だった。


「うわっちっぁ!」


 抑えた――んだろうけど。

 ポリーの毛には効果は抜群。

 燃え上がった尻尾。

 逃げるポリー。

 引火したカカシ。


 地獄絵図と化して試験は終わった。


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