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――生きる才能が無かったのね


 スマホを弄りながら呟いた母さんの最後の言葉。

 僕、嵯峨さが界人かいと享年きょうねんは10だった。


 生まれてすぐ僕の身体には欠陥が見つかった。

 生まれてしばらくしたら家族は僕に会いに来なくなった。


――入院費が大変だから、あんまり会いに来れないのよ。きっと


 看護師さんの言葉が嘘だと気付いたのは五歳の誕生日にスマホを貰ってから。

 スマホで家族のことを調べてみたからだ。

 別に有名人ではなかった――けど、母さんの服を見つけた。バッグもネックレスも指輪も――看護師さんに聞くとそれらは「とっても高い」ということだった。

 スマホで幾ら使ってもいいというカードも「お金持ち」の証と言われた。

 病院の「個室は高い」というのも知った。


 それからはカーテンを締めきってスマホを弄る毎日。

 空の高さを調べ、ゲームをして、海の青さを調べて、ゲームをして、海の向こうの国を調べて、ゲームをして、氷だけの場所を調べて、ゲームをして、砂だらけの国を調べて、ゲームをして、ゲームをして、ゲームをしてゲームをしてゲームをして――


――神を呪った。


 そのせいかスマホの電池が駄目になって来るのと一緒に僕の身体も駄目になった。

 薄暗い病室で起きているのか寝ているのかも分からないまま過ごし

 流れる点滴の音が聞こえかねない静けさの中で、もう付かないスマホを見つめて


 いつか氷だらけの世界の冷たさを知りたかった

 いつか砂だらけの国の暑さも、海だって泳ぎたい

 いつかお日様の下、いつか青い空の下へ

 いつかあの窓の向こう、あの扉の外へ

 いつか、いつか、いつかと願っていると――

 僕は生まれ直していた。


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