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アルフレッドの幸せ瞬間とかわいい決意

作者: 英星璃

僕はアルフレッド。

この前幸せな事があったんだ。

僕には幸せな瞬間だった。

みんなには小さい事だと思われるだろう。

日記にも細かく記した。

知りたければ読んでみるといい。

少し恥ずかしいというか照れてしまうが。

温かく見守ってくれ。

 花の香りを乗せた春風が窓から入り込んで僕の前髪を揺らして通り過ぎてゆく。

 高揚する気持ちを落ち着かせようと窓からの景色を見ていたが視界の先は丘まで続く道をとらえ気づけば一点しか見ていなかった。


「まだなのか………早く、早く会いたい」


 丘まで続く道が見えるこの部屋は父の書斎になっており、許された日のみ長居できる場所でもあった。スタンリー侯爵として毎日忙しくしている父の書斎は王からの秘密書類もある為、息子の僕でさえ許可がなければ入室が厳しい場所になっている。

 許可まで取りこの書斎に長居しているのは、彼女がくるから。

 僕の心をトクトクと響かせ続ける彼女がくるから。

 抑えきれない気持ちからか息苦しくなりながらまだ見えぬ形を捕らえようとしていた。




 僕は、スタンリー侯爵家の長男として生まれた「アルフレッド」

 まるで今回はこの人で生まれましたみたいな言い方だがしょうがない。前世を断片的に覚えているからそう表現してしまう自分がいる。前世の記憶を思い出したせいか行動、しぐさが大人びいているが生まれてまだ5年しかたっていない。たまに子供っぽい口調になり母からは可愛いと言われ照れながらまだ5歳なんだと実感する日々を今過ごしている。

 そして大人っぽい行動をしがちな私にも子供らしい行動をする時がある。

 それはシャーロットに会える日である。

 朝からそわそわし何回も窓を見ては今か今かとうろうろと落ち着きがない行動になり母は目を細めて愛おしそうに見ているが気にする余裕さえなく、私はシャーロットに会いたい一心で頭の中は彼女でいっぱいだ。

 シャーロットとの出会いは今世がはじめてではないと思い出したのは5歳の誕生日にみた夢だった。何回も転生して出会い、出会った時にはすでに遅く病で別れ、国が違い、種族が違いで何回も別れその度に奥歯を噛み締めたものだ。もっと身近で転生してほしいと願った時、兄妹で生まれ変わり(さすがに近すぎる。血縁とは………うまくやれないものか)と神に愚痴りたくなった。

 そして、今世(やっとだ、やっとシャーロットと結婚できる)嬉しくて神に感謝したがまだ5歳の私は、この先の長い道のりにため息しかでなかった。物思いにふけっていると窓の外から馬車の音がして急いで駆け寄った。既に屋敷の敷地内まできている馬車を見た瞬間に侍女の声も気にせず駆け出していた。


「ようこそおいでくださいました。ハンプトン伯爵様

「お招き頂き感謝する。ん? おや?」

「お部屋まで待てませんでしたか? アルフレッド様」

 先に執事のロナウドが出迎えていたが、駆け寄った私を見るなりため息まじりの苦笑いを気にせず私はシャーロットしか見ていなかった。

「お招きありがとうございます」

「ようこそ、シャーロット。私はずっと待っていました。会えてうれしいです」

「この前会ったばかりでしょ」

 まるで長い間離れていたかのような返事に笑われてしまったが、金糸の髪を揺らし青い瞳でクスクスと笑う愛らしい彼女に目を奪われていた。



 ハンプトン家とは父親同士が学友であり親友でもありお互いに行き来してお茶会を頻繁にするほど仲が良かった。毎日でも彼女に会いたいぐらいだが今一番シャーロットに近いのは私だと思うと嬉しすぎて会いたい衝動をおさえることはできた。

 両親がお茶会している間、私たちは別室で遊んでいるのだか今日に限って彼女は両親と離れたくないらしく同じ部屋にいることになった。仲がいいだけあって話が盛り上がっているが彼女の父親はちらちらとこちらを見ながら話しているのを見るとすごく溺愛しているのがよくわかる。彼女が結婚する時は最後の強敵になるだろうとおもいどう倒そうかと考えていると目の前にクッキーが差し出された。

「アルフレッド、クッキー食べる? おいしいよ、どうぞ!」

 美味しそうなクッキーよりも彼女の艷やかな赤い唇を見た瞬間、無意識な行動をとっていた。

「チュ……」

 僕はいつの間にか口づけしていた。

「まあ………うふふ」

「ア、アル、何して……」

 お互いの母親は、戸惑うやら温かい眼差しで見られるやらたいした反応はなかったけどハンプトン伯はすぐに来て(みなの前ですることではない)と注意されシャーロットと離されてしまった。シャーロットはキスだとも知らずに思った事を母親に話した。

「お母様、アルフレッドはお腹すいているみたい。私のお口を間違ってたべちゃった」

 皿に取り分けたクッキーを私のそばまで持ってきてニコニコしながら差し出してくる。

(二人きりの時はいいかなぁ)

 そのあと何度も念を押された時のハンプトン伯の顔はほんとに怖かったのでしばらくはやめておこうとおもった。

(ずっと君と一緒にいたい)

 そして君も私とずっと一緒にいたいと思ってほしい。



 帰り際にシャーロットの母親がニコニコしながら来た。

「あの子はもっと綺麗に成長するから、ずっと一緒の未来を欲しいと思うならアル君は頑張らないといけないわね。一番の強敵は、今目の前にいる旦那様かもしれないけれど……うふふ」

 優しい笑顔で頭を撫でられた。

 応援はされているのだろうがハンプトン伯の背中が大きな壁に見えて僕は深くため息をついた。


 今世は、必ず君と一緒に幸せな人生を歩む!


 去って行く馬車を見つめ、もう会いたい気持ちが膨らんできているのを感じながらふさわしい男になるために5歳だけど決意を固めた。




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