5話 ベレス・アフィーリア
予定より早く投稿します。ベレスの過去とヤンデレ化です。
私は妖精族と人間のごく一般的な家庭の元に生まれた。…いや、妖精族と人間の家庭は一般的ではないか。妖精族はもともと身体がとても小さい。そうして必然的に、大変残念だが!私は体質的に身長が小さいままだった。
妖精族と人間のハーフに生まれた私は妖精族の血を大いに引き継ぎ魔法の才能があった。幼少期にはもう中級魔法を片手で使えた。その甲斐もあり、帝都にある魔法学園に入学することができた。
そこで出会った“彼”と。これが私とレノン・ラスクールの初めての出会いだ。
彼に対する最初の印象は、不思議な人だった。白髪に赤目の人間離れした美貌を持つのに、いつもぽけーっとしてどこか危なっかしかった。
でも、そんな彼の初めて戦闘を見た時、目を奪われた。まるで自分の体の一部のように槍を扱っている姿がとても美しかった。いつもの彼からは想像つかない嬉々として相手を蹂躙する姿は彼の本質そのものだと感じる。
いったいいつから鍛えたら、あれほどまでに素晴らしい槍を扱えるのか想像すらつかない。真に驚くことは魔力操作だ。卓越した武人なら魔力を体に纏い身体強化を使うことができるが、彼は武器にも魔力を纏わせることができ、あまつさえ、体の一箇所に魔力を集中させて纏わせることができる。そんな彼に私は少なからずとも惹かれていたのだろう。
彼は天才なのだろう。私も、自分で言うが天才だった
彼は、最年少で超級魔法を扱うことができる私と互角に戦うことができるため、そうであろう。
そして私は、彼を含め4人の友人ができた。その誰もが、同等の実力を持ち、性格が違いながらも、気が合い一瞬で仲良くなった。そして、私はずっと彼らと一緒にいるのだろうと自然に思った。
実習で事件が起こった。戦闘演習で学園が管理していたダンジョンでスタンピードが起こった。
◇
しばらくして、
私は劣勢に立たされていた。侮っていたのだ、スタンピードを。数が多すぎて捌くので精一杯だった。ようやくモンスターを殲滅した頃には私の魔力はほぼ尽きかけていた。
残りのボスモンスターを残して
目の前にはBランクのボスモンスター〔ギガントオーガ〕がこちらを見おろしている。
「グォォ」
「くっ…魔力がもう残ってない。」現状上級魔法をうてるかうてないかの魔力しか残っていない。しかも、やつは魔力抵抗がとても高い。上級魔法は耐えられてしまうだろう。
それでも、上級魔法を放つ[雷雲招来]!黒い暗雲がギガントオーガの頭上に現れ耳をつんざく轟音とともに激しい雷がギガントオーガを襲う。
しばらくの静寂のあと、砂煙が晴れる。
「グォォ!!」ギガントオーガは無事だった。
やはりだめか…自分が天才だと慢心していたゆえの失態だな、と自身を責める。
ギガントオーガが腕を張り上げる「ガァァァ!」
自責と後悔と共に目を閉じようと天を仰いだ時、赤く光り輝く何かがギガントオーガめがけて凄まじい速さで飛来する。
着弾「ガァァァ!?」ギガントオーガの腕を吹き飛ばした。遅れて、1人の人間がやってくる。
「あ…レノン…?」弱々しく声が漏れる。
「ベレス…大丈夫?」心配そうに顔をのぞき込んでくる。ドキッ、助けに来てくれたレノンに心がときめいてしまう。(仕方ないでしょこんなの!惚れてしまうよ)誰に弁明してるのやら
そうして、あっさりとギガントオーガを倒したレノンの横顔に月明かりがあたり、なんと美しいことか、すっかりレノンの虜になってしまう。
「ふぅ…疲れたな」ここに来るまでにかなり汗をかいたのか、そう言って彼は上着を脱ぐ。彼の体についた古傷のひどさに目を見張る。
「レノン…それって、」
「あぁ、昔ね鍛錬してたときについた傷だよ、今はもうなんともないさ」そう言って苦笑しながら一番ひどい古傷を軽く叩く
勘違いしていた彼は天才などではなかった、この圧倒的古傷の前をしてそう思い知らされる。あの日の見立てどうり、想像を絶する鍛錬の末、ここまで強くなったのだ。なんて、健気なのだろう
「あぁ、レノン、レノン…あんたはほんとに…」
「ん?何か言ったか?」「…いや、何でもないよ」そうして怪しい笑みをレノンに向けるのだった。
◇
数年後、トントン拍子に3人とパーティーを組み、不服だったがもう1人、昔のレノンの知り合いを加えて私たちのパーティーは5人となり、《五芒星》を結成した。レノン一緒に過ごすうちにさらに愛情が増した。
まさに順風満帆と言える生活だった。あの地獄が起こるまでは
◇
Aランクパーティーへと昇格した私たちはとある、ダンジョンへと来ていた。
「おーいレノン何やってるんだー?早くこっちに来ーい。」ソフィアが呆けてるレノンを呼ぶ。
「ほんとだよ、まったく…ここはダンジョンなんだからしっかりしてよね」
ソフィアのことは出会った初めは気に入らなかったが
レノンを愛する者同士今ではすっかり仲良くなった。
全くソフィアは愛が深すぎるから困ったものだ。
なんて呑気なことを考えていた。
気づけば目の前に自分の体よりもはるかに大きい腕が迫っていた。
次の瞬間、背中にわずかな衝撃をうけ、後ろを見るとレノンが吹き飛んだ
レノンはまともに受け身すらとれずそのまま気を失う「レノン…!」ヒュッと息が鳴る。私のせいで…レノンが私のせいで
急いでレノンのもとに駆け寄る。幸い息をしている。
「レノン、レノン…レノン…レノン!」私は必死に魔力を与え続ける。すると
目が開く
「レノン…レノン、レノン!」私は嬉しさのあまり抱きつく。そして、赤灼竜の方に向き直り、超級魔法を発動させる。
[暴虐水奔流]!荒れ狂う波が全方位から貪るように赤灼竜に襲いかかる。
しかし直撃を受けても、ピンピンしていた。しかし、特段驚きもせず、次の魔法の準備をする。魔法陣を2つ発動し、超級魔法を発動する。
しばらくして、全力を尽くした私だったが体力がつき赤灼竜の攻撃で足元が崩れ、ふらついた隙を突かれ、尾が振り抜かれる。とっさに防御魔法を発動させたが先の戦闘で魔力がほとんどなくなり、とうとう尽きてしまい、壁に激突し、動けなくなってしまう。
(こんなんじゃ、レノンを守れないよ…悔しい)
レノンはボロボロの体を魔力で繋ぎ止め、私を脇に持ち上げとソフィアを運ぶ。
投げ飛ばされた後にレノンを見ると、転移石をこちらに掲げていた。
ドクンッと心臓が脈打った。レノンがすることを頭では分かっても、思考が拒絶する。「レノン…?やめて」
だが、無情にも転移石が砕け光り輝く
レノンを失ってしまう。このままでは…レノンが
「レノン…だめ…やめてよぉ」涙がまたこぼれ落ちる。
「レノン何やってるんだ!」「レノン?!」「レノン…だめ」
そして赤灼竜に駆け出し数秒の膠着後弾き飛ばされたレノンを見た私の心はぐちゃぐちゃになった。
「レノ、ン…死ぬ?だめ…レノン…レノン」名前をつぶやくことしかできない自分がもどかしい。
「やめてよ…私が、一緒に…このままじゃレノンが……」頭がグルグルする。心が黒く塗りつぶされる。
転移陣が光り輝き、レノンが笑いかける。「生きて」その笑顔を見た時、意識を失いかける
「レノン…レノン、レノン、レノン、アハッ、アハハ、潰す。殺す。あのクソトカゲ許さない。一生」目のハイライトが消え、うつむきながら、ブツブツとつぶやき、殺意をたぎらせていた。
こうして世界に新たなヤンデレが生み出された。
読んでくれてありがとうございます。ベレスは愛情をたくさん受けて育ったので、他のヒロインと比べて愛が重いですが、無自覚です。逆に他の皆が愛が重いと思っています。
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