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匂いのない獣たちへ  作者: 犬口 単
1/3

#慈燕堂という女

私はこの現代社会に生きる、一般的な高校生である。

誰もが主役であるというきれいごとも、みな生きるべきだという戯言も、全部くだらない。

女性というだけでいやな目で見られるようになった現代社会は、主に女尊男卑によるものであろう。

いや、弱者男性が多くなり、女性が暴君と化しているだけなのかもしれない。

まるで実験体のラットのような結末を私の代で見ないことを願うばかりだ。

それはそうとして、私はこのストレス社会に馴染めずにいる。

弱者である私のような人間、いや生き物は、本来なら見捨てられ野たれ死んだりする運命である。

しかしこの慈燕堂(じえんどう)(しまい)が生きているのは、義務教育による識字能力と政府や社会の方針によって強制的に延命装置をつけられているような状態だからだ。


弱い弱い、意志薄弱の私は将来

この社会の演者にすらなりえず、ただ脇役としてすらもなれず

ただ女性F(OL)という歯車として生きていくのだ。

でも性的搾取をされないだけ、きっと恵まれていると考えるべきなのか。



知りすぎてしまうことは鬱を引き起こす。

人は未知に恐怖と好奇心を抱くが

はじめからそれを感知しなければ幸せと呼べるのだろう。

死ぬときもきっと苦しくなくなる。

ソレが、無知が幸せであるからして

だから罪になりえるという。


長く話したが、要は

私は疲れたのだ。

考えすぎてしまう私にとって、情報はノイズでしかない。

考えがまとまらないのだ。

助けを求めることも時間を要する、ゆえに求めない。

面倒くさいという怠惰と、どうせ意味がないという諦めが邪魔をする。


ああ、もしも

夢を見るように、痛みも苦しみもなく

死ねたとしたら


いや、もしも


この慈燕堂終の人生が、平凡ではなく

何か物語になるような、面白いものだったら

こんなこと考える暇さえないのかもしれない。



展開は変わらず


やはり死にたいという気持ちだけが残留する。


人生はそう甘くない

小説やフィクションのようにはいかない。


ああ、もしも


もどれたとして


やりなおせたとして




あの日の自分を殺していれば

今の私は苦しまずに死ねるのだろうか?


そんな私の疑問はただ

風に飲まれて消えるだけだった。




この私は別に不幸というわけではない。

人並みに能力を持っており、体もいたって健康だ。

障害もなければ欠損もない、完璧な人間に思える。

しかしこの現代社会は、広くなりすぎた。

小さな学校という箱庭で一番になれたとしよう。

しかし世界的に見れば中の下の実力だった。

知らなければ幸せだったと思えるだろう。

世界は簡単につながるようになった。

しかしソレにより中途半端な人間が増えてしまった。

いや、すごい人が見つかりやすくなったのだ。

実力のある人間が実力を発揮しやすい社会になった。

見つかりやすくなった。いつでも見れる、探せるようになった。

ソレは半端にできる人間が浮き彫りになったということだ。

中途半端は、一番つらいのだ。

上の人間は下を見ればいい。

下の人間はソレに気づかないだけだ。

しかし中途半端な人間はどちらも見る。

そして、悩む。

疲れる



疲れた。



寝る前に考えることではないな


頭が疲れて、いい感じに眠くなってきた。

同時に死にたくなったけど。


ああ、時間巻き戻らないかな。


慈燕堂終(17才)という女は、中途半端であるのだ。


共感されたくて考えているわけではないが


獣のように自由であれば、単純であれば


なんとなく悩みもなくなるのかなと、そう考えて


今日も私は眠る。

































まるで、ファンタジーのような出来事を願って。

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