表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/69

“なんとかしなきゃ”から“信じて待つ”へ

親として、息子の不登校の始まりが一番つらかった。

それは、今までの自分のすべてが否定されたような感覚だった。

自分が信じてきた常識や、これまで積み重ねてきたものが、根底からひっくり返されたように感じた。


底に沈みきった息子を、どうやって引き上げていけばいいのか。

高校受験はどうなるのか。出席日数は?中間テストを受けなかったら?

次々に浮かぶ不安で、頭の中は休まることがなかった。


「なんとかしなくちゃ」

その一心で、ネットで不登校について必死に調べた。

けれどその時の私は、目の前の息子の状態より、自分の不安をどうにかしたい気持ちでいっぱいだった。


一方の息子は、固い殻に閉じこもり、すべてがどうでもいいという状態だった。

将来のことどころか、「今」を生きることすら苦しい──大げさかもしれないが、生きるか死ぬかの瀬戸際だったのだと思う。


目先のことばかり考える私と、すべてを放棄した息子。

当然、親子で噛み合うはずもなかった。

それでも私は、現実から逃げ出したい気持ちを抱えながら、毎日仕事へ向かっていた。


私の心に転機が訪れたのは、不登校から2ヶ月後。

私の幼なじみと話せたこと。

彼女の娘も不登校を経験していて、彼女なりに出した答えがあった。


「今、本人が犯罪などに巻き込まれて困っていないのなら、自由にさせれば良い」


その言葉が、私の心にストンと入ってきた。

「どうにかしなきゃ」と躍起になるのではなく、

たとえ中学1年生でも、息子を信じて好きにさせること。

困っているときは助けるけれど、そうでないなら──言葉は悪いけれど「放っておく」。

私の中で許容できる範囲が広がり始めた。


それでも、モヤモヤすることは何度もあった。

そのたびに周りの人に助けてもらいながら、どうにかやり過ごした。


そして時間が経つにつれ、息子は少しずつ、殻から出始めていった。

私がある意味開き直り、ありのままの息子を受け止めるようになるにつれて。

数ヶ月単位、時には年単位の変化だったから、親には“気長さ”が求められた。


けれど結果として、自由を手に入れた息子は、自分自身を確立していったのだと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ