違う窓から見ている息子
息子は小さい頃からこだわりが強い子だった。
もっと早く気づいてあげられたら、もっと理解してあげられたら…と後悔することもあるけれど、私だって“お母さん一年生”からのスタート。間違いもたくさんしてきた。
小学校1年生のとき、サッカークラブの練習試合で息子がオウンゴールをした。
コーチに「みんなに謝りなさい」と言われたけれど、息子には“なぜ謝らなければならないのか”が理解できなかった。だから謝らなかった。
でも、そのコーチも、子どもに対する指導に慣れている人ではなかった。息子が納得できるように伝えることができなかったし、私もスポーツ経験がなく、うまくフォローできなかった。
他にもトラブルが重なって、結局そのクラブは辞めることになった。
小学校の3、4年生あたりから、息子は黒い服しか着なくなった。
小学校入学当初、坊主頭をからかわれたことがあり、それ以来、髪の毛を切ることにも強い抵抗を示すようになった。切るときは泣いて嫌がった。
中学に入ってから2年間は完全な不登校だったので、当然床屋にも行かず、髪はどんどん伸びてロン毛に。
中学3年生のころからようやく自分で床屋に行くようになったけれど、切るのが「もったいない」と言い、数センチ切ってもらうだけ。
そんな息子が、中学の卒業式の数日前に床屋へ行った。髪は今までになく短くなったものの、束ねることができない程度の“長めヘア”。
卒業式の練習中、隣の席の友達は、遅れて体育館に入ってきた息子の髪型に不意を突かれ、吹き出すのを必死でこらえたらしい。
今、私は思う。
息子は、私とは“違う窓”から世の中を見ているんだな、と。
私にとっての「普通」は、息子には通じない。
それでも、息子のキャラクターや特性を、少しずつ知っていく中で、「ああ、そういう考え方もあるのね」「そういう世界の見方もあるのね」と思えるようになった。
理解できているとは言えないけれど、受け取めようとする姿勢は、これからも忘れずにいたいと思っている。