息子が教育センターに行くために餌をぶらさげた話
息子が中学一年で不登校になってから、私は毎月教育センターに通い、相談を続けていた。
息子の特徴を細かく伝え、アドバイスもたくさんもらったが、本当は、息子自身が相談員と直接話すのが一番良いと思っていた。
けれど当時の息子はトゲトゲしていて、相談員と話すことを「気持ち悪い」と嫌がった。
教師に対する不信感が強かったから、相談員も同じ「敵」として認定していたのだと思う。
私には、息子がオンラインゲームで知らない相手と話しているほうがずっと恐ろしく見えた。
それでも本人は、教育センターに行く必要性など全く感じていなかった。
中学二年になった時、家庭訪問にやってきた担任の先生に初めて会うと言った。
大きな変化だった。
もしかしたら、教育センターにも行ってくれるかもしれない。
そんな期待を胸に、私はエサをぶらさげる作戦に出た。
「教育センターの帰りに〇〇珈琲店でご飯食べない?」
そう誘ってみたら、「起きてて暇だったら行ってもいい」と言ってくれた。
それから何度か、息子は教育センターに足を運び、相談員と直接話すことができた。
将棋を一緒に指してもらったのが楽しかったらしく、少しだけ心を開いたようだった。
本来、「ニンジンをぶらさげる」ご褒美システムは、教育の中ではあまり望ましい手ではないと私は思っている。
それでも、あのときの私は、それに頼らずにはいられなかった。
息子にとって殻から出てくる一歩になってたら良いなと思っている。




