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第六話 お茶会

お茶会と言えば学院の中庭がお決まりの会場だった。

普段見慣れた風景も、毎日着ているの制服も、浮かれた私の目にはお姫様のお城とドレスのように輝いて見える。


既に到着していた友人たちとあいさつを交わしながら軽く話していると、どうやら招待された全員が集まったようで、主催者であるベロニカ嬢の挨拶が始まる。

とはいっても楽しんでいってね、くらいの簡単なもので、そのシンプルさが逆に気を遣わせまいという彼女の優しさであろうことが伝わってくる。

未来の王妃である彼女はその立場上気を遣われることが多いが、反対に彼女自身も周囲に過剰に自分を気にさせないよう、努力しているのである。その優しさもまた、彼女の美点であるとこの2年でよく分かった。


そんな彼女だから、この場にいる皆がリラックスして心から楽しめているようだ。どんどん話が盛り上がる。

勉強のこと、趣味のこと、今口にしたお茶がおいしいこと、いろいろ話していたが、特に誰が示し合わせたわけでもなく次第に話題の中心は来月にせまる舞踏会になっていった


さすが貴族の子女が集まる学校というか、このベルミントル学院は行事として6月と12月にパーティーが開催される。

学院の生徒はもちろん、外部の貴族の方にも招待状が送られる大規模なもので社交場としての性質も持っており、今のこの生徒たちが開催をしているお茶会とは違いドレスコードや守るべきマナーなど様々な決まりごとが存在する。


その中でも基本的かつ重要なのが男女のペアで参加、というルールである。


それは生徒たちも例外ではなく、多くの人は婚約者と参加している。

そう、3年生ともなると婚約者がいる人がほとんど、むしろいない方が珍しい。前世の私は今の彼女たちよりも少し年上だったが、結婚など全く考えていなかった。その年月で培われた感覚はどうしても抜けず、まだ17歳とかそこらでもう…?という気持ちが抑えきれないがそれがこの世界のスタンダードだから私にはどうしようもない。


そんな私は全く話すことが無かったが、相手からの参加のお誘いが遅いことにご立腹の人もいれば今からどんな靴を履いていこうか悩んでいる人、普段と違う雰囲気にしてサプライズをしたいけど彼はどんなドレスだと喜ぶかしら?と考えている人、千差万別で全く飽きない。


普段は令嬢としての風格を纏っている彼女たちもいわゆるコイバナできゃあきゃあとはしゃぐ姿は年相応。その可愛らしいギャップについ微笑ましさを感じ顔が綻ぶ。


「ジゼルさんはどうされるの?」


「えっ。」


聞き役に徹していたが不意打ちで話を振られて一瞬フリーズしてしまった。


その特性上ゲームでも攻略相手を確定させつつ仲を深める重要なイベントでプレイ中の私も毎回楽しみにしていたが、いざ自分がその場に行くととなると話は別。


絶対に参加したくない。


だって一緒に行く相手なんていないから。


今までは何かしら理由をつけて参加をしてこなかった。

単に楽しむだけでなく、他の家とのパイプを作るという意味でも重要な機会のためかなり積極的な人も多いが、幸いと言うか、私の実家は田舎の小さな家なのでそもそもこんな都会に住むお偉い貴族の方々とは縁がなく、両親のおかげでこのような場に参加せずとも家からは何も言われなかった。


そのことに胡坐をかいてのらりくらりとかわしてきたが、そろそろまずいのかもしれない。



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