第六十七話7月31日出校日3
「れ、レベル1って言ったか? 嘘だろ? 夏休み中どれだけ早く取ったとしても、二週間と少ししか経っていないのにレベル1ってどんなズル使ったんだよ……」
中の上と言ったところのイケメンでもブサイクでもない顔立ちの少年……ダイゴがボソっと呟いた。
確かこの夏前に冒険者デビューしたんだっけ……まぁこんな速度でレベルが上がったなんて話は、俺も聞いた事ないんだけど……
「まあまあ、レベルだけは“ライセンス”に刻まれる……偽装行為は重罪だ……」
「俺も疑われたままだと気分が悪い見ろよ」
俺はライセンスを見せつける。
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氏名 加藤光太郎 平成xx年xx月xx日生
住所 豊橋市xxxxxxxxxxxx
交付 令和xx年07月18日 30021
202x年(令和xx年)7月06日まで有効
特殊地下構造体武装探索許可書
位階 1
スキル
魔法
番号 第 213456 号
愛知県
公安委員会
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俺は《《まだ》》表記の変わっていない。レベル2に位階が上昇したという申請は出したものの。実際に交付されるのは早くて一週間ほどの時間がかかるということで、現状俺はレベル2と記載されたライセンスを所有していないというわけだ。
「レベル1の冒険者……でもじゃぁなぜ、俺の拳を受け止めれたぁッ!!」
叫ぶ利根川を周囲のクラスメイトが宥める。
「武器や防具で底上げしたんだろ? 裕福な家はいいよなぁ~親ガチャに当たった奴はさぁ」
「確かにD級の装備を手に入れるのに金は貸して貰った……「ホラ見ろ!」」
俺の説明も聞かずに、自己の論理の正当性だけをダイゴは主張する。
一瞬で俺を見る目が、仕方がなく冒険者をやっていたらいちゃもんを付けられた可哀そうな奴から、親の金の力で調子来いているクズの陰キャぼっち野郎に切り替わってしまったようだ。
場の空気を支配するには、注目を浴びる事だ。演説と弁論で成り上がったと言っていい偉人達は数多い。
例えば、ローマ帝国の父ガイウス・ユリウス・カエサル。例えば、当時の最大権力に抗議の意思をしめしたオリバー・クロムウェルやロック、ルソー、モンテスキューやレーニン 、スターリン、毛沢東、ポル・ポト、ドイツのちょび髭。それらは演説に優れ皆を引き付けるカリスマ性を有していた。
いま直ぐ自然に会話の主導権を握る方法は……昔見たアニメでは、注目を集めるためにワザとマイクをハウリングさせるという、手法を使っていたキャラが居た事を思い出した。
俺はそれに習って力強く机の上板を叩いた。
バン!
「黙って聞いていればごちゃごちゃと……借りた金の150万円は、直ぐにでも返すつもりだ。防具は自分の金で15万ぐらいの最安を買ったよ……自分で支払ったのはせいぜい30万ぐらいだ。お前らだって程度の差はあれど、親のお陰で冒険者を出来てるんだ俺を責める資格はあるのか?」
「俺だってD級の武器があれば……」
――――と利根川は小さく呟いた。
「盾か防具をD級装備に選んだんだろう? 攻撃を貰うリスクを考えれば王道の正しい選択だ。だが俺はリスクを選んだだけだ。“虎穴に入らずんば虎児を得ず”とは後漢の将が、匈奴と戦った際に部下を勇気付けるために言った言葉だ。安全策ばかり取っていては上がるステータスもレベル上がねーよ!」
俺は深く息継ぎをする。
喋りながら台詞を考えるのは苦手なんだけどな……
俺が潜り抜けてきた死線を考えれば、爆速でステータスが伸びたってバチは当たらないハズだ。
「俺は武器を、お前は防具を選んだだけに過ぎない。本当に金に余力があるのならD級装備で全身を固めているハズだろう? それこそ何を選んだかの違いでしかない。その選択の責任を俺に求めるな。お前はその防具のお陰で、安全に大怪我なくダンジョンを探索できたんじゃないのか?」
「ぐ……」
どうやら思い当たるフシがあるようで、ぐうの音も出ないようだ。
「なら、その選択は間違いではなかったという事だ。俺みたいに格上とばかり戦う必要はない。俺は上級状態異常回復薬を手に入れなければならないからな」
これで利根川に説明すると言う体裁で、クラスメイトに説明をすることが出来たと一安心していると……
「という事はアレに出るつもりなんだ……」
横井は実験動物を観察するような視線を俺に向けて来た。
得も言われぬ寒気を感じ、真夏だというのに全身に鳥肌が立つ。
「あれ?」
「とぼけんなよ。お盆の特番でやるんだよグラディエーターの特番で『グラディエーター~アマチュア学生探索者最強決定戦202✖夏~』って、その優勝賞品が上級状態異常回復薬なんだよ。数千万円は下らない回復薬が景品なんだ。高校生から大学生までわんさか集まるだろうさ……それに出るつもりだったんだろう?」
そう言ってスマホの画面を見せてくる。締め切りは今日までで開催日は11日と12日か……これはまさに“禍転じて福と為す”だな……
ルールは大会運営が貸し出す魔道具の耐久を削り切った方の勝ちというシンプルなものだ。ただし魔道具の使用は回数制限ありと事前申告制となっている。
「妹さんの病気が何かは知らないけど、上級状態異常回復薬はほぼ全ての病を治すと言われている。
加藤にとってはまさに、喉から手が出るほど欲しいだろう?」
確かに目に見えたリスクはない。
優勝賞品の上級状態異常回復薬はダンジョンに潜るという当初の目的の一つだった。
横井としては俺が優勝すれば、推挙した自分の慧眼を誉めそやし俺の師匠ズラでもするつもりだろう。もし負けたとしても勘違い野郎が恥を晒したと、画面の前でクラスメイトと共に小馬鹿にする事が出来る……素晴らしいぐらい性根が腐っている。
「ああ、家のダンジョンがスタンピードになった時の対策のために探索者になったけど、妹を元気にしてやれる可能性が転がってきたんだ絶対に物にしてやる!」
そんな俺の宣言を聞いて数人が舌打ちをしたものの、多くのクラスメイトが頑張れよと掌を返したような態度になった。
「頑張ってねコータロー」
懇意にしている武器屋の看板娘の藍沢鈴鹿と他数人だけが、心の底から応援してくれているのが伝わって来た。
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