第四十六話7月27 記者会見と掲示板 旧劇
――――JSUSAの支部には、記者会見を行うような立派な部屋はなく、多くの場合が会議室や放送協会の一室を間借りして放送する事が多い。
今回の場合は、当事者? である豊橋支部と“本店”と仇名されているJSUSA東京本部の合同による会見と、記者団への事前発表がなされていたため、押し寄せた報道・新聞関係者達は「何事か?」と浮足だっている。
それは私も変わりなかった。
「麻那花ちゃん今日は頑張ってね」
と無責任にスタッフさんは言うけれど……
私の心は不安で一杯でした。
(私、声優なんだけどなぁ~)
「はい。精一杯頑張ります!!」
思わず本音が零れそうになるけど、ぐっと堪えて精一杯の笑みで答える。だって私はアイドル声優だもん!
「ははは、その意気だよ。コメントの中から質問を見つける作業はスタッフでするから、あんまり緊張しないでいいよ。
質問する際は、『コニコニ動画の月壬です。以下質問文』って感じで言ってくれればいいから。
まぁウチが質問出来るとは思えないけどね(笑)
それにしても麻那花ちゃんは本当に運がいい、番組のロケ帰りにこんな事件に遭遇できて、オマケに仕事に出来てるんだから相当持ってるよ」
何て答えたらいいのか分からなくて……私は愛想笑いを浮かべます。
「そろそろ始まるみたいだ。このタブレットを見ててくれ」
そう言うとタブレットPCを手渡されたました。
暫くするとコニコニ動画の生放送が始まり、私を斜め後ろから移した映像が流れ始めました。
すると、昔見た深夜アニメのオープニングのような弾幕が画面を覆います、その多くはネットミームですが、そのくだらなさに少しだけ気が紛らわされました。
笑い声が胸元に付けたマイクに拾われたのか、こんなコメントが流れて来ました。
コメント欄
コメント:『声可愛い……』
コメント:『声優みたい』
マジモンの声優なんですけど ムカ(゜Д゜)つく……会見前にお喋りしたら印象が悪いよね? だから私はぐっと堪えます。
暫くすると、キーンと言うハウリング音が鳴り、ざわざわとした会場が一瞬で静寂に包まれました。
記者たちはスマホやタブレット、施設のモニターを注視する。
『ただ今より、愛知県豊橋市にあるダンジョンで起きた、“モンスターの異常発生”についての記者会見を行います。私は司会進行を担当させて頂く、フリーアナウンサーの平野司と申します。
事前にご説明した通り、今回の事に関連性が認められない質問が出された場合には、質問の変更を求めず次の質問者を指名しますので、あらかじめご了承下さい』
男性がそう告げると、モニターに写された白髪の好々爺と言った風体の男を中央にして中高年の男女が入室する。
モニター越しに大量のフラッシュが焚かれる、きっと今頃『フラッシュにご注意下さい』とテロップが流れている頃だろうと私は思いを巡らせました。
好々爺の部下と思われる男性が、原稿を見ながら話し始めました。
『え~っ本日7月27日、愛知県豊橋市にあるダンジョンで“モンスターの異常発生”が御座いました。JSUSA日本特殊地下構造体協会としましては、規定に伴い探索者を招集し事態対処に努め、本日の20時頃に事態の安定化を確認しました』
その発表に周囲に居た記者は騒めきました。
ダンジョンについて余り深く知らない私には、その異常性が良く分かりませんでした。
なので詳しい人が居そうなコニコニ動画のコメント欄と、Twit〇erを開きました。
――――――――――――――――
良治 10秒前 ︙
鎮静化早くて良かった。
〇 口 ♡3 凸36 <
――――――――――――――――
これじゃない。
――――――――――――――――
コーヘー 22秒前 ︙
モンスターの異常発生ってスタン
ピードの言い換えでスタンピード
と言う事実を隠してるだけやん!
〇 口3 ♡2 凸140 <
――――――――――――――――
これだ。この誤魔化すような言い方に皆ざわついていたんだ!!
コメント欄
コメント:『モンスターの異常発生って……』
コメント:『あ、(察し)』
コメント:『それスタンピードって言わない?』
コメント:『←そうだよぉ(便乗)』
コニコニ動画のコメント欄にでも同じような事を言っている。爪痕を残したい訳じゃないけど、コレが詭弁だと言う事は私にも理解出来た。
『皆様お静かに! お静かにお願いします!』
フリーアナウンサーは声を張り上げ、画面の向こうの記者たちを宥めている。
無論この場も大騒ぎだ。
『ダンジョンは未開の領域ですので、絶対安全とは言えませんが今回のモンスターの異常発生は終息を確認しました。愛知県豊橋市にあるダンジョンにはJSUSAより探索者を派遣し、数か月は監視の強化に励み、ダンジョンのある近隣住民の方々に不安な思いをさせないように奮闘して参ります。また豊橋支部支部長である、容保より説明させて頂きます』
ここでようやく、こちらのスタジオにスポットライトが当たる。
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