第四十四話7月28デート2
「映画面白かったね!」
藍沢さんは大きな瞳をキラキラと輝かせ、映画の感想を熱く語る。
それに対して、俺は共感と相槌でマシンガントークの弾雨を凌ぐ……
「ああそうだね。特に格闘戦のシーン……」
「そう! そうなんだよ! 何でもアクションシーンのスタントさんが全員探索者らしいんだよ!」
インディコ・ジェーンの脚本書いた奴出て来いよ!
崩壊しかけの古代遺跡の中で、空手ベースの肉弾戦で岩を砕いたりして、もうめちゃくちゃだった。
だが探索者がアクションシーンをしていると言うのなら、納得できなくもない。
|米海軍の戦闘機パイロット育成する映画《トッ〇ガン》のように、冒険者を映像作品に利用する事で、目に見える形で自国の戦力をアピールし、自国の探索者の数を増やしたいと言う、合衆国政府の意図が見え隠れする。
そんな事を考えながら俺達は劇場を後にした。
………
……
…
一組の若い男女が長いエスカレーターを下っている。
少女の方はギャルと言った見た目で、カジュアルな私服に身を包んでいる。
男の方はと言うと、着慣れてないファストファッションに身を包み、如何にも整えて来たばかりの頭髪の毛先を遊ばせ、両者共に気合が入っていると百戦錬磨の恋愛強者達には分かるような風体だった。
それに対して周囲のカップルは、生暖かい目線を向けている。
映画館の一階にある、ゲームセンターに足を運んでいた。
射幸心を煽るようなBGMやSEが鳴り響く、古き良き五月蠅いタイプのゲーセンではなくライトなゲーセンだった。
「映画の半券で1プレイ無料か、コイン10枚って結構ありがたいよね……」
「そうだね。鈴鹿さんは良くゲーセンに来るの? 駅前だと地下とアーケードの方にゲーセンあったよね?」
「友達と行く時しか行かないかな……」
友人が多い。とは言えない二人は押し黙ってしまう。
「何やろうかな? 時間を潰すなら王道のメダルゲームだけど……」
「コータローならクレーンゲームって言うかと思ってたけど苦手なの?」
「あんまり得意じゃないかな……」
「へーそうなんだ。大体3000円ぐらいでアームが強くなるイメージだけど巧い人は直ぐとるからなぁ……」
時計を見るともうそろそろシャトルバスの時間だった。
「あ、折角だしあのでっかいクマの縫いぐるみがほしいな」
彼女が指さしたのは、どうやって持って帰る? と言いたくなるような超特大の縫いぐるみだった。
「あれ取るの?」
「ダメで元々だよ? 欲張ったっていいじゃない」
「確かにそうだけど……」
店員さんにたのんで半券二枚で遊ぶ事を伝る。
一回目はアームの強さと癖を把握するためにプレイする。
これならいけるな
二回目で展示品にアームを当てて、雪崩を起こして縫いぐるみを2個手に入れた。
「この子は、大事にするね。」
その笑顔は眩しかった。
店員さんに袋を貰ってぬいぐるみを入れる。
「お腹空いたねどこ行こうか……」
「じゃぁあそこ行きたいな……」
彼女がスマホで表示したお店は、学生御用達のファミレスだった。
「……てかこのお店でよかったの?」
ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』、『プリマヴェーラ』、ラファエロの『システィーナの聖母』、フラ・アンジェリコの『受胎告知』など名画の数々が壁や天井に展示された聖堂風の店内に俺達は居る。
YouT〇beの2,5chまとめで見た。外国人にはサ〇ゼは高級レストランに見えると言う話を思い出した。
「え、なんで? サ〇ゼ美味しいでしょ?」
「そうだけど……」
俺の中でのデートのイメージは、少し高いお店に週末だから、デートだから、記念日だからと何か理由を付け、少し背伸びしてでも一緒の時間を分かち合うというものだ。
「あ、もしかして女の子と出かける時はお洒落なお店に連れて行かないとダメ! とか思ってた? だれでもそうだと思うけど“楽しい”って言う気持ちは、どこで過ごすか? も大事だけど……一番大切なのは誰と一緒に過ごすのか? だと私は思うな……」
彼女は慌てて付け足すように早口でこう言った。
「それに《《友達》》と一緒に行くご飯なんてファミレスで十分だよ? それに私達はまだ、彼氏彼女でもないんだからさ……」
早口でなおかつ段々と小さくなって行く声のせいで聞き取れたのは、「ファミレスで十分だよ?」の部分までだ。
「ごめん聞こえなかったもう一度言ってくれないか?」
「何でもない。ドリア美味しいよねって言ったの!」
二人ともサラダなんて腹に溜まらないものは食べず。ドリアやパスタと言った食いでのあるものを食べている。
「そうだね……」
そんな事を言いながら、匙でドリアを掬うと口に頬張る。
ホワイトソースとミートソース、チーズの味が複雑に絡まった。
深い味わいが舌を覆い尽くす。
個人的には、俺ガイルで材木座がやっていたフォッカチオにガムシロップを付けると言う甘味をやりたいのだが、仮にも女の子を連れている今、そんな意地汚い真似をする勇気は無かった。
「今日はありがとう。私の我儘に付き合って貰っちゃって……」
「そんな事無いよ。良い息抜きにもなったしこっちこそ誘ってくれてありがとう」
夕日を背にして少し照れくさそうに鈴鹿さんは微笑んだ。夕日のせいで頬が赤らんでいる様に見えたのか? 本当に頬が赤らんでいたのは、俺には解らなかったけど、照れていて貰えていると嬉しいなと思った。
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