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第十話7月18日ダンジョン一日目2ゴブリン戦


 ゆっくりと探るような足取りで、隧道や坑道のような道を歩いていると、広い部屋のような場所にたどり付いた。


 『じゅるじゅる』と何かを啜るような不快な音が聞こえる。


モンスターか?


 ゴツゴツとした坑道を背にし、部屋の中を覗き込んでみると、そこに居たのは緑色の体色をした一匹の小人だった。

距離は15メートルと、そこまで離れている訳ではない。

何かに怯える様に、時折見回すその額に生えた小さな角が人外を表している。服装は原始人や未開の部族を思わせる腰巻程度。

武器として傍にあるあれは木製の棍棒か?


 間違いない! ゴブリンだ。


 RPG では序盤の雑魚敵として有名で、ゴブリンだけでラノベが一冊出るくらい、知名度と人気のあるモンスターだ。


 ゴブリンは一匹で此方に背を向けて何かをしている。


今しか無いな……


 俺は首を一刀で跳ね飛ばすイメージシミュレーションを行う。

こっそり背後から近づき、その首にオニキリカスタムを叩きこみ、一刀の元に切り伏せる。

モンスターへの未知への恐怖心は存在するが、命を奪う事への躊躇いとか、人型のモノを殺す事への抵抗感や恐怖心と言う物は今のところ存在しない。


    よし、いける! イメージは完璧だ。


因みに死んだモンスターは、ダンジョン内放置で吸収される。

吸収消滅するまでに時間がかかり、約24時間の間は物質として残る。

今回頸部に斬り付ける為、まるで噴水の様に真っ緑な鮮血が飛び散ることになるはずだが、時間がたてば消えるので気にする必要はない。

 


 足音を出来るだけ立てない様に、垂直に足を落とし音を殺す。

剣は既に抜いており、八相(はっそう)……上段の構えよりも上方……簡単に言えば、バッティングフォームのように構えながら近づいてゆく。


 そうする事で、上段からの素早い袈裟斬(けさぎ)りに派生させる事が出来る。

仮にもし反撃されたとしても、攻撃箇所の誘導が出来るので、相手の次の手を読みやすいと言うメリットもある。


 ヤツはまだ俺の接近に気が付いていない。 ここだ!


ゴブリンの背後から、オニキリカスタムを力いっぱい振り下ろした。

『ビュン』と風切り音を立て、首筋目掛け振り抜いたオニキリカスタムの刃は、力みの為狙いが甘く、誤ってゴブリンの肩に深くめり込んだ。


ズブゥ

刀越しに感じた硬い感触は、鎖骨を砕き肩甲骨途中で止まったものだろう。

俺は慌てて無防備な背を足の腹で押すように蹴り飛ばしながら、食い込んだ刀を引き抜き、少し距離を取って剣を中段に構えた。



「ぎゃああああ!」



 ゴブリンは体色と同じ緑色の血を右方から、ドクドクと滲ませながら左手に木製の棍棒を持って威嚇してくる。


 俺は刀を振って、その動きをけん制するが……



「おっと!」



 俺が刀を振るのに合わせて、ゴブリンも棍棒を出鱈目に振り、「くるな! くるな!」と言わんばかりの必死の抵抗を見せる。


 あと半歩で胴体に切っ先が届く距離なのだが、奴の獲物である棍棒にもし、刀が命中してしまえば刀を絡めとられて、得物を封じられてしまう可能性もある。なので注意しなければいけない。


 刀の切っ先を相手の目に向けてけん制しながら、相手の出方を伺う。

ゴブリンは小柄のため、速力、腕力、攻撃範囲共に人間より弱い。

移動の初速と爪や牙程度しか、人間より優れている武器はない。

 オマケに俺の初撃で、右肩の骨は粉砕しており棍棒は左手で持つしかない。しかも、先ほど俺のけん制にあわせて、出鱈目に棍棒を振るい必死の抵抗を見せたのだ。体力も精神力もそのうち底を尽くだろう……


 ここまでくれば、詰将棋と同じ順序で攻めていくだけの簡単な狩りだ。

 左回りに擦り足で半歩の間合いの距離をグルグルと回る事で、相手もそれについていくように動かなければならない。特に怪我をしている右肩側に回られば、ゴブリンの反撃はワンテンポ遅れるからだ。

 こうやって精神的に追い詰めてやることで、戦闘の支配権を奪うのだ。


 一瞬、ゴブリンの動きが遅れた。


刹那。


 俺は咄嗟に一歩前に踏み込んで刀を突き出した。


 それは偶然にもゴブリンの左胸に突き刺さる。

 俺は愚かにも、初めて感じる生きた生物を刃物で貫く生々しい感触に戸惑い、剣の柄を握る手が一瞬緩む……



「ぎゃああああ!」



 ゴブリンの絶叫で俺はっと我に返り、再び刀の柄を強く握りしめると声を上げて壁際まで走り抜ける。



「せやぁぁぁぁああああああああああああ!」



 ゴブリンは苦し紛れに剣の刀身を掴み引き抜こうと抵抗するが、少し引き抜いたところで口から血を吐いて、ゴホゴホを血が混じった嫌な咳をする。


 どう見ても致命傷だ。

 俺の勝利は明らかであり、だからこそ余裕でいられる。

そうこうしている内に、鈍い銀色の刀身に滴って落ちる緑色の血の量が増えピクピクと間抜けに痙攣し、暫くするとピクリとも動かなくなった。


 俺は気力を振り絞り、切っ先の刺さったゴブリンの身体を足の裏で踏みつけて、剣を抜く。

 何とかコーティングのお陰で剣をブンと、横なぎに振るだけで血は殆ど取れた。



「疲れた」



 俺は肩で息をしながら近場の石に座る。 



「はぁ、はぁっこれでステータス手に入ったかな?」



 モンスターを倒すと人はステータスを得ることができる。

ステータスを手に入れる事で、身体能力などが向上し超人になれるのだ。



「ステータスオープン」



――――――――――――――――――


加藤光太郎

Lv.1

力:I

耐久:I

技巧:I

敏捷:I

魔力:I

幸運:I

《魔法》

《スキル》


【禍転じて福と為す】


・障碍を打ち破った場合。相応の報酬が与えられ、獲得する経験が上昇する。

・障碍が与えられる。また全てのモンスターの戦闘能力が上昇する。

・モンスターの落とすアイテムの質が良くなる。またステータス幸運を表示する。


 読んでいただき、ありがとうございました!


 少しでも面白い! 


 続きが読みたい! 


 と思っていただけたら、


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