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お見合い

作者: 杉谷馬場生

 高級なホテルの別棟に建てられた料亭に入る。料亭なんて30年生きてきて初めて来る。

世話好きの叔母(母の姉にあたる)からお見合いをしないかとは何度も言われ、その度にやんわりと断ってきた。叔母は何かと世話好きで「もういい歳なんだからいいお嫁さんを貰いなさい」ともう3年くらい言われ続け、その度に避けていた。

3年前といえば私は27歳である。このご時世にいい年も何もないと思うし、「お見合い」という行為が時代錯誤な気がして乗り気になれなかった。なので話が出る度に「今は仕事で手一杯」と言い続けてきた。実際、社会人になって5年しかたっていない私は雑事も含め、遊ぶ暇などなかったと言ってもよかった。なのでそれまで見合い写真なども見ないままに断っていた。

しかし流石に3年も断り続けると叔母の顔も立たない。母からも「一回くらいやってみれば?」とも言われたのでまずは写真からと初めて見合い写真を見たのが3週間前である。

整った顔立ちの凛とした、それでいてお淑やかさを持った顔立ちの女性が写っていた。正直、やるだけやって断ろうという気持ちだったのだが、会ってみたいと思ってしまった。一目惚れというやつだった。

料亭の和装の中居に個室まで叔母と共に誘われる。中居は腰を下ろして個室の襖を開けた。大きく窓が開かれて見事な庭園が見える。様々な色に染まった葉の中に池があり、ししおどしが大きな音を立てた。

先方は既に席についていた。叔母が「あら、お待たせして申し訳ございません」と辞儀をするので私も頭を下げた。

「いやいや、こちらが早く来ましたもので。今日は一つよろしくお願いいたします」と男性の声が聞こえる。頭を上げると男性の隣に写真の女性が座っていた。

写真と同様の和装で、実際に見ると写真以上に凛とした透き通った瞳でその目がとても魅力的だった。急に緊張してきた。

我々が座ると料理と飲み物が供されてそれぞれが自己紹介をし、しばらく4人で談笑した後に私と女性との二人きりとなった。ここでようやく我々はプライベートの話をすることにした。

「あの、ご趣味はなにかされているのでしょうか」私はまだ緊張していた。

「はい。あの、言いにくいのですけど…」女性は少し口籠る。そしてしばらくした後口を開いた。

「お見合いを趣味としております」

私は女性の言った言葉の意味をすぐには理解できず、しばらく沈思した。そして今、この場がどういう状況か理解し、緊張が一気に解けた。

「え!じゃあこの場は趣味なのですか⁉︎」

ししおどしが大きな音を立てた。

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