聞く力
「アデイロが撤退?理由はナンだ?」
自国が侵略されようとしているのに撤退だと?
出発前は偉そうなものの言い方をしておいて、いざとなったら他人に押し付けて逃げよう、って魂胆が気にいらない。
ここは厳しく意見してやらなければ、彼の今後に良くないだろう。
「直接理由を聞きたい、彼をここへ」
表向きはこんな感じだったが本音は、国境を越えた侵略者が巻き起こす事態に対応する案がない。という事に部下たちは気が付いていたのだが、口に出すものはいなかった。
「既に単身で王都に向かわれております」
これを聞いたコベセルの顔色が変わった。
なんという無責任。彼の心の中にアデイロを非難する感情がとめどなく湧き上がり、あふれ出許容を超えた感情が彼の表情に影響を与え出した頃、誰かが呟く。
「じゃあ今は誰が指揮を?」
そうだ。
単身で離脱しただけで、兵士たちは未だ撤退の準備中、ということは?
「おい!」
近くにいる部下にコベセルが声をかける。
彼の目的は残された兵士たちを自分が指揮すること。それは可能か?
答えを聞いた彼の頬が緩む。すぐに伝令を走らせ、アデイロの部下たちに自分の指揮下に入るよう指示した。
総大将不在の中、副将ベリリテがコベセルに面会を求め彼の元に現れる。
「どうなさるおつもりですか?」
開口一番ベリリテが問う。
コベセルの返答如何によっては軍律に違反しようとも撤退すべきだと考えていた。
「どうすれば良いと思う?」




