笑顔の重さ
セラーゼの使者がアデイロの元を訪れた。
彼女の意思は、速やかな撤退。
これを聞いたアデイロは考える。国境を突破され、侵略を受けているのに撤退?
あの方は何を考えておられるのか?(でも好き)
使者に対する好意的な表情に少し翳りが生まれたのを見透かしたように、使者が続けた。
「あとはコベセル様にお任せするように、とも仰っていました」
コベセル?任せる?家柄だけの能無しに任せる?
俺がいまここにいるのは何故だ?アレの行動が遅いからじゃないのか?
それをいまさらやって来て、というのは後は自分に任せろ、という。しかもそんなコベセルの勝手を許すどころか肩を持つなんて、あの方はどういうおつもりなのか?(それでも好き)
表情の変化が自分にとって良くない結果を生み出そうとしている。あれはヤバい顔だ。
「アデイロ様におかれましては、早急に王都へ戻りセラーゼ様の相談したいとの事でございます」
「帰るぞ!」
立ち上がってすぐに後ろに控える幕僚たちへ向き直ると最速で撤収する指示を与える彼の背中はこう言っていた。(やっぱり好き!)
指示を終え、自分に対して微笑みさえ見せながら再び腰を掛けるアデイロの姿を見た使者は、一瞬恐れた閑職いきが一転して退座時にずっしりと重い恩賞を授かることとなった。
確かに現在の国境付近での状況を考えると、前例のない異常な事態だとわかる。そうなればヤハリ頼りになるのは自分なのだ。国防とはいえ、命を懸けて得られるのはその場の勝利でしかない。アレには身分相応の役割だろう。自分は違う。部下たちはこの国の真の精鋭たちだ。それが万が一とはいえかすり傷でも負うことになってしまったら?
他の国に軽んじられるかもしれない。だから今回はこれで良い。俺は彼女と共に国政を担わなければならないのだから。彼女もそれを望んでいるからこそ使者を出したのだろう。(本当にめちゃくちゃ好き!)
アデイロの募る思いは既に王都へと届いていた。




