ここだけの話 追いたし
セラーゼがセンデウと話しているのは彼女の執務室だ。
センデウがここをに入ったのは初めて。そのせいか彼の表情は普段よりも固く強張っている。そう感じたのはこの場にいる本人自身だろう。いまの状況では、彼女に呼ばれたというせっかくの機会を無駄にしてしまうかもしれない。
誰が課したわけでもなく、自分自身によって高められた障壁はいつの間にか本人では乗り越えられないほどの高さになっていく。
自分の困惑するような表情がセラーゼへの重荷になっているのでは?
動揺を抑えきれない彼は、憧れの彼女を見つめる事しかできない。
この思い。届くのか?
センデウは悩んでいる。
突然。前触れもなく扉が開いた。
思考を遮られた彼は固まってしまう。身動きできない彼はそこで、最悪の事態を想像する。
侵入者がもし…。
もし、この国の宰相に危害を加えようとする人物だったら?
彼の妄想は新たな段階へと踏み出そうとしている。
そこに。
礼儀知らずの乱入者が現れた。
「なんだ?何の用だよ!」
「ちょうど良かった」
いきなりの訪問にも笑顔で対応するセラーゼにコベセルは苛立ちを覚える。
ただ、セラーゼは彼の登場に、本当に。ほんの少しだけ感謝していたのかもしれない。
もっとも、コベセル本人はそんな事情はお構いないがないようで、自分の主張を披露した後は満足して帰っていった。
彼の退出した後、緊張を根こそぎ持っていかれたセンデウの様子を見たセラーゼが新たな訪問者を迎え入れる。
「じゃあ、はじめましょうか」
なぜだか少しだけ声の弾んだセラーゼに促されて来訪者が頷く。
予期せぬ顔合わせとなったセンデウは、さっきまでの緊張を忘れたように打ち合わせへと入り込んでいった。
センデウは夢を見る。
彼には双子の妹がいた。
彼が見た夢。それは不思議なことに双子の妹と共有している。いや、夢の中で会話をすることも出来るほど二人の共感性は高くい。この力こそ、彼がここにいる理由。今回のコベセル遠征に従事するために呼ばれていたのだ。
だが問題は、身勝手なコベセルがこちらの都合よく自分を連れていくのか?という疑問。
こんなことを考えるだけで、少しだけ不安で不安定な気持ちが蘇ってしまう。
ところが、そこに関しては何の心配もいらないというセラーゼの言葉に改めて崇拝度を上げたセンデウは出征の日、再びコベセルと顔を合わせる。




