ここだけの話
コベセルが出征する意思を固めた頃、セラーゼから呼び出しがかかった。
彼は内心、憤っていた。
いまさら何の用だ?
貴族院のボンクラどもを出征させてあいつらの地位を、でかい面させようと思ってるから俺が出ることに反対する気なんじゃないだろうな!
執務室で感情を隠そうともせずに悪態をついていた彼に部下が言う。
「たまには人の意見も聞いた方が良いですよ…」
語尾が消え入りそうになったしまったのは、無駄な言葉を発してしまった自分に気が付いてしまったのかもしれない。
もちろん、というか当然対象者にはこんな助言が響くはずもなく、次に彼が発する言葉も予想はついていたのだが、立場上は聞くことにする。
「じゃあ、行ってくる!」
この言葉には二つの意味が込められていた。一つはセラーゼの呼び出しに対する発言、そして二つ目がどんなことがあっても遠征に行く、という決断だ。それはつまり後の仕事はお前に任せたぞ。
という意味が込められているのだが、普段から任せられている身としては特に変化はない。
いや、出征で彼がいなければ効率的に仕事が。
などと考えている間にコベセルは颯爽と部屋を出ていく。
彼の行く先はもちろんセラーゼの部屋だ。
扉を開け、部屋に入ると見知らぬ男と話している所だった。
「ちょうど良かった」
いきなりの訪問にも笑顔で対応するセラーゼにコベセルは苛立ちを覚える。
「なんだ?何の用だよ!」
先客を無視して放つ彼の言葉が彼女との格の違いを表しているように感じたのは先客とコベセル自身だったのかもしれない。




