後光
「 !」
微かに漏れたモバーの叫び。
Жに比例して緩んでいたとはいえ、彼女に緊張が走る。
それに伴って「キュっ!」となった所があったが、彼女の視界に残光(例のカッコいいヤツ)が現れた。
テリトリーを侵された彼女の瞳に憎悪が宿る。
敵の数は?
呪縛から解放されつつある彼女が全力で周囲を索敵した結果、対象者は右目が光るひとりだけだと確信した。
この時、彼女は再び動き始める。敵は一人。
しかも、自身の放つ残光によって自らの位置をさらけ出している状態で全く脅威を感じない。
ある程度警戒しながら排 泄を続ける彼女の紋章に更なる輝きが生まれていく。
精神的ダメージを与えるために。
モバーの妄想がほとばしる。
一瞬視界を失ったが、瞬時にリカバリ―をする。
彼は残光か目に入らないように、時計回りでヤクダイの正面へと向かう。そして…。
正面へとたどり着いた彼のが見たのは、激しい後光を背負うように蹲る何者かの姿だ。
かお、顔は?
見えない。
正体不明、輝く光を身に纏った存在に思わず
「ホタル?」
と呟いてしまう。
それが彼の最後の言葉だった。どんなにGPSよりも正確に位置を知らせる炎を目がけて、ヤクダイの攻撃が放たれたのだ。
目を撃ち抜かれ、崩れ落ちるモバー。
彼の体からうっすらと視認できない光が立ち昇る。
亡骸の辺りを漂う淡い光は、霊能力者でなければ認識できないようで、ヤクダイの緊張は、少しづつ緩んでいった。
この時、なぜか偶然にも彼女の体内からすべての毒素が排出され、紋章の輝きが徐々にその力を失っていく。
やがて厚く覆っていた雲が薄まっていくのを待っていたかのように、彼女はゆっくりと立ち上がる。
「んぁっ!」
こぼれた言葉、そして瞬応。
どうやら少し残っていたらしい。
でもそれは、ほんのちょっとだったよう。
彼女は、改めてゆっくりと立ち上がり、しびれる足を堪えながら森の中に消えていった…。
…って、あれ?
戻ってきた??
安全を確認して肉体に戻ろうとしていたモバーが動揺する。
はやく肉体に戻らなければ魂は霧散し、本当の死を迎えることになるのだが、今の状態で戻っても、確実に彼女に勝つことは出来ない。
悶々としながら彼女の同行を見守るモバーの斃れた肉体に、彼女が近づいてくる。まさか?
何かするつもりなのか?
とはいえ、亡骸の傍で佇む彼にはどうすることも出来ない。
唯一出来たのは、後光によって見えなかった彼女の顔を確認できたことだけだった。




