えーっと…なんだっけ?
「ふぇっっくしょ!」
肌寒さから思わずくしゃみが放たれる、と同時に下腹部に圧迫感を覚えた彼女の意識が状況を認識し始める。
まず視覚が脳に送ったのは、わりとイケメンの微笑むような笑顔。これが意外過ぎて理解ができない。
なんで?
さっきまでどこかに向かっていたはず。どこ?意識が戻る寸前の出来事が、まるで数週間も前の出来事のように感じられ、思い出すことができない。
そういえば誰かと一緒に行動していたような気もする。過去の記憶を辿ろうと意識を集中させるが、体を襲う嫌悪感がそれを阻む。
ここで彼女がようやく自身の状況を把握する。
それは仰向けに倒れている自分、胸元のはだけた姿で横たわる彼女に馬乗りになって微笑む男。その手は彼女の体を弄っていて、皮膚から伝わる感覚が男を激しく拒絶した。
反射的に男の顔面を殴り飛ばす。ダメージを受けていない様子だったが、何故か男はゆっくりと立ち上がり3メートルほど距離を置くと
「いいよ」
そう言って腕を組んだ。何かを狙っているのか?真意の掴めないまま、素早く立ち上がって拳を構えて男に正対する。
これを見た男の表情が微笑みから笑みヘと変わり、同時に鼻腔から血を流し始めた。
さっき殴ったからではない、欲情からの出血だと確信させる笑みに戦慄を覚えつつヤクダイが考えていたのは…。




