純粋な雑音
ラノアの横を通り過ぎた思念の矢、その先にはエストの後ろ姿。
少年の精神エネルギーが彼に迫る。影を削ぎ、僅かに力が失われたとはいえ、その威力は恐らく中年の心を砕くのに十分な純度を有していた。
所が正面のロジンが放った得体のしれない術に気をとられている彼は、そのことに気付けない。
絶対注視
意識して対策関る類のものではない。光を浴びた瞳孔が意思とは関係なく反応してしまうような恐ろしい術。これに対応するには?
敵と対峙し、平静を装いながら考える。これが今回は彼にとって不幸の始まりであり、幸運への足掛かりでもあった…。
静かに語るエストの言葉を聞く二人に少し苛立ちが見え始める。
それを瞬時に察した彼はこう続けた。
「ここからは要点だけ…」
報告と自分語りの境界線を見極めた一言で、少しだけ雰囲気が和んだように思うのはきのせいだったかもしれない。
何かおかしい?そんな違和感が最終的にエストを救う。
ロジンの微妙な表情で、一時は警戒していたはずのラノアの存在に改めて注意を向ける。
ここでロジンが動いた。意識を全集中されて機会を伺っていた矢先の出来事だ。次こそは、完全な自賛鏡で決める!
彼に対しいて慰めの言葉があるなら?
気負ったんだな、とかかもしれない。
振り向いたエストの瞳に少年の純粋な精神が襲いかかる。
迎え撃つ彼の精神とその防壁は?
過去に幾度も砕かれた障壁は、経験を経て再構築され、幾重にも重なっている。しかし、少年の純粋はそれらをいとも簡単に破壊していった。
ここでエストはブラックアウトする。




