秒
顔を上げたラノアの瞳に影が射す。
彼女を制圧しようとしていたサルハは、無意識だがその影を捉えていた。
それは同時に、経験の浅い少年がラノアの術にかかった瞬間でもある。
影眸子
対象者に油断と慢心に付け込んで相手を支配する技。
なぜこの状況でそんな安っぽい能力を使ったのか?
どうして?
理由は簡単。今回の対象者が精神対策に不慣れな少年だということだ。これはもう、自信をもって断言できる。
あとは?そう、あえて言うなら正直言って今の彼女にとって出来ることと言えば、これぐらいしかなかった。ぐらいだろう。
ここで一つ、秒針が進む。
なんかやってんな!?
レグトナはサルハのの微妙な反応に即座に気付いた。しかし影に異変は無い。だが…。
迷うことなく影のレベルを上げる。危害を加えない前提だが、手を抜いたせいで自分達に負傷者がでるような結果はエストも望んでいないだろう。
ここでまた、秒針が一つ進んだ。
激しい嫌悪感に襲われるラノア。体感としては全身を弄られているような不快感だが、影は既に放たれている。
はやく!
後は待つだけ。抵抗できず、良いように嬲られるこの状況に耐えながら、少年の動きを待つ。
と同時に、一つ秒針は進む。
微かな少年の動きに少し異変を感じたものの、確信を持てなかったミオラもここで動いた。
しかしラノアの放った術からは既に何度か秒針は動いている。
それでも!
弓を放つような姿勢をとった少年を抱きかかえるように体当たりをし、少年を守るようにラノアに背を向けて大地に倒れこむ二人。
この時、既に秒針は新たな時を刻んでいた…。




