関係各位
溢れる汚臭まで洗い流されたと錯覚すほど眼前に広がる汚濁が薄まっていく。
それと共に、逃げ遅れた人々の表情に浮かんだ絶望も和らいでゆくのが感じらていた。しかし店長は既に動き出している。
さっきまで考えていた一時撤退ではなく、湧き出る清流に抗う残留物に対するすすぎを始めたのだ。
どうやら一度汚染されてしまうと頑固な汚濁は洗いきれないらしい。汚染された者たちによって、再び砦は阿鼻叫喚へと誘われていく。
意識がまだはっきりしない。
ジェロノの瞳に映ったのは、乱れきった室内。
今は何をしていたっけ?脱出する?ん?凱旋だったか?そうそう、部下を集めて国境を超える…。
いや、超えたんだったか?
とりあえず座ろう。
一息入れるつもりで椅子に手を伸ばし、椅子を引き寄せようとするがうまくいかない。
バランスを崩した彼は椅子と共に転倒し、当たったら痛い所を強打する。
その痛みが彼の記憶を呼び覚ます。そして、痛みを感じる場所を右手で猛烈にさすりながら、左手は無意識に眼球を失った眼窩を触っていた。
「この状況、いうなれば、そう。
大収穫祭、とでも…。いや、それでは下品すぎるか?
まぁ良い、関係各位に通達を出せ!
我々の努力によって遂に扉は開かれた、とな!」
満面の笑みで指示を出す上官に対して、部下は内心舌打ちしながら頷き伝令を手配する。
かねてより計画されていた䰠魔――。
この文面が各方面にいきわたる頃、別の場所でも新たな動きが始まっていた。




