限界
たった一人。
この作戦に参加していないだけでこの有様だ。
ジェロノ軍を包囲し、殲滅する。たったそれでけの簡単な任務だったはずなのに、なぜ?
原因は、ただ一つ。
情報の伝わり方だろう。セラーゼ推奨、いや、お墨付きだったか?
もしかしたら秘蔵っ子、だったかもしれない噂の彼。もし不在の間に作戦が成功すれば、後にどんな災いが降りかかるとも限らない。現場jにとって最も重要なことは、作戦の成功ではなく「どれだけ上官の要望を実現できるか?」なのだ。
ただし、そんな状況でも期限は区切られている。
「もう、待てないな」
内情を知る側近だけに呟くと、新たな命令を下す。
「敵が!敵が全面攻勢に出ました!」
このままでは…。
だが、これに対する側近たちの反応はあまりにも薄く、既に諦めたような雰囲気が漂っていた。
こんな時になって、ようやく覚悟を決めのか、ジェロノが
「少し、少し一人にしてくれないか」
そう呟いた。
周囲の反応は?
失笑、もしくはそれに類似する反応が多い。
何を今更?
といった感じで彼らはその場を去ってゆく。
誰もいない。一人残された彼は何故か小さくため息をつき、迷うことなく左手の人差し指を右目へと突っ込んだ。
人差し指は深く眼球の裏側まで届きいた。そこで彼は強く爪を立てる。と思い切り白目を引きはがした。
当然激しい痛みが襲う。視力を失うほどの光がおこり、声も出せずに悶絶する。その時、瞳から何かが剥がれ落た。
俗に虹彩と呼ばれるそれは、白目という外皮を失い、その効力が弱まったのだろう。
声もなく悶えるジェロノの右目に新たな変化が始まっていく。抑制を失った彼の黒目は透明な眼球を侵食していく。
滲むように広がる黒点が徐々に全体を支配し、瞳はやがて漆黒へと染まる。
やがて…。
苦痛を乗り越えゆっくりと瞼を開くと、自覚は無いようだが、何故かその口元には自虐的な笑みが浮かんでいた。




