出し惜しみ
「䰠亟狼を」
包囲されてから既に三日。
援軍、などという期待は既に過去のもの、となった現在。
ジェロノの、いや、ジェロノが想うのは数日前の自分の姿だ。
国に凱旋したら結婚する、あの時の自分は純粋にそう思っていた。かなり本気で。
そんな彼の思惑とは裏腹に事態は進展し、行き詰った挙句、下したのがコレ。
当然、周囲の反応は…。
それはまぁ、当然かもしれない。
䰠亟狼。
ご存じ䰠亟狼とは本来迅速な撤退に特化し、攻撃力にはさほど…。
な感じなのだが、あえて選んだのは、自分と部下。
彼らの覚悟を知るためだった。
ジェロノ陣営の動きがあわただしくなる。
無駄だと解っているのに。
「敵に動きあり!」
彼らを包囲して既に三日。
そりゃまあ何かしら動くだろう、とは思っていたが、それ以上に思っていたのが
あいつの遅刻さえなければ、この件はもっと早く追わっていたはず。
という思い。
ピースの欠けた状態で、ここまで検討しているオレ。
認められてますか?
こんなに頑張ってますよ!
「䰠亟狼を」
周囲がざわつく。
当然だろう、それはいわば自身の敗北を意味する言葉がから。
戦線を放棄して撤退する、この時の機動力として最も適した存在がいま。
何も浮かばずに、ただ問題の先送りをするかのような発言に嫌悪感をあらわにする。
「いや、それは…」
「さすがにそれは…」
でもそれは…」
長年付き添った重臣たちの言葉が彼の心に突き刺さる。
いや?
さすがに?
でも?
言わない彼が絞り出したのは。
このままではいづれ…、
表情の硬さを目の当たりにした部下の一人がポツリ。
「と・投降…」




