ちょうどいい
ザレルが単身、宿に潜入する。
その後姿を見届けたルディスとジコンが次なる一手の為に動き出した。
しかし宿の場所が主要街道沿いとあって、客層や通行人なども常識人ばかりだ。
関係者に苛立ちが募る。今回の漫遊はザレルの突然の思い付きで時間もなく仕込みもできていないからだ。
とにかく時間が…。言い訳をすればいくらでも出来てしまう。
が、ザレルは既に宿の中に入っている。ここで言い訳をしても既に何の意味もない。
ーそんな状況下で二人は互いに顔を見合わせた。
瞳は語る。
我々がいない間に、もしなにかあったら?
恐らく二人はそんな事を考えていたに違いない。
後に、彼らをサポートしていたという関係者は当時の様子をそんな風に語っていた。
不味いな。
これは宿に入ったザレルの言葉ではない。
今回の件限定して瞳で通じ合う中になった二人は、どちらともなく裏通りへと足を運んでいく。
我々がいない間に。
このプレッシャーは彼らの歩みを速めた。彼らは尺も構成も関係なく突然山場が訪れることを恐れていたのだ、うんざりするほど繰り返した立ち回りやきめ台詞が、ここ一番で輝く。
ここぞという時には必ず披露してきたこの周回が危機にさらされている。
「潮時かな…」
誰かが呟いたのかな?それとも自分の心の声が聞こえただけなのか?
もしくは老人の我がままに付き合うことに疲れたのか?
それとも?
思っていても口に出せない言葉が関係者の心を蝕む。
諦めたらそこで…。
ルディス達は裏通りを見渡し、該当者を探し始めた。




