悲しき過去 中編
また一つ、人間の村が魔物に蹂躙された。
入ってくる情報はこんな話ばかりだ。戦況は思わしくない。
ソロランタス連合は窮地に立たされている。
䰠と共に生きてきた我々が、魔物に太刀打ち出来ないとは…。
このまま人類は滅亡するしかないのか?
ふと我に返ったエチアンが顔を上げると七人の視線が集まっていた。
これは良くないな、みんなを不安にさせてしまったかもしれない。
「ありがとう、引き続き状況がわかったら教えてくだください」
報告者に優しく声をかけると、退出する彼の後ろ姿が、新たな思いを汲みあげた。
自分の倍以上も生きてきて、もう体も思うように動かせなくなってしまっただろうに…。
それでも自分たちの子や孫の未来のために命を懸け、抗おうとしている。
弱気になってはいけない、勝機は必ず来るはず!
とはいうものの、敵は強力で太刀打ちするのも…。
いやいや、そんなことでは未来を勝ち取れない!!
でもどうやって…?
「…んン"ッ!」
視線の密度を感じて再び我に返ったエチアンがその濃さに思わず目を向けたのは育ての親であり連合発案者の祖母ユテルベラだった。
「迷ってるのかい?それとも悩んでる?ま、それもいいわ。でも、結果だけは変えちゃいけないよ」
今の自分には重いと感じる言葉だったが、その横にいた祖父の表情も強張っている、彼もまた同じように不安を抱えていたのだろうか?
いや、たぶん気の強いおばあさんの言葉に恐々としていただけだろう。
そこに再び、先ほどとは違う者が報告にやってきた。
「ロケジン村において、傀が斃れました」
この報告を受けた全員が衝撃を受ける。
今までの戦闘で傀が傷を負うことがあっても命を落とすことはなかった。
ただでさえ劣勢な状況で魔物に出来ていた最強の手段を失えば、人は本当に滅んでしまう。
重苦しい空気がその場を包む。
と、そこで
「䰠劫…」
「なっ、そんな馬鹿なことすれば、恩恵を失った我々は結局滅びることになるんだぞ!」
「そうですよ、それに方法もわからないのに、いい加減なことを言わないでください!」
ゾンレンの言葉に、ワンテイエやロデルが苛立ちを隠さず、声を荒げる。
昂ぶった気持ちのまま話しても良いことが無いな。
そう思ったエチアンは、一息入れよう、と提案してその場を立ち去った。




