思ったのと違う
新人研修計画書に書いた内容には、はじまりの村跡地での実践的な模擬戦、と書いておいたのだが、実際に地元の警察官と鉢合わせするとは思ってもいませんでした。
やや不貞腐れた表情で答えるエストに対して、さらに彼を問い詰めているのは本部付きの調査官、カナンとその補佐のソラソという二人だった。
彼らははじまりの村、という組織に降りかかる様々な問題を解決するために調査室という部署を立ち上げ、自らも調査官として活動する情熱家だ。
「それで?どうしてそんなことになったんです?」
格下相手に無双。
地元の警官程度の力なら、たかが知れてる。
情報によれば、派遣されてくるのは直近で不始末をやらかした男と、これと言って特筆することが無いような新人同然の小娘らしい。
もうこれは舐めプで十分だろう。
彼の思惑通り順調に標的を追い詰め、育てた新人もそれなりに戦っている。
後は先方の要望通り、男の方に一週間程度の怪我をしてもらって撤収数る。
はずだったのに。
空気が変わった。
「そこで反応してしまったんですね?」
待ってました。
と口を挟んだのはソラソだ。
ダメージ効果を考えて少し貯めを含んでいたカナンの唇は、わずかに開きかけ、再び閉じられる。
ただ、ソランに向けて微かに顎と視線が動いていたのだが、それを知る者は本人以外にはいないようだ。
気に入らないソラソの言葉に、一瞬詰まったエストだったが、そのまま話を続けていく。
考えるより先に新人たちへ撤収の合図を送る。
だが、その時には女の方が行動を起こしていた。
どっちだ?
迷っている間にも女は新人へと距離を詰めていく。
レグトナとミオラは経験者だけに行動は速いがサルハの動きでは…。
確信が持てないままラノアの背後へと飛び出すが、その側面をロジンに狙われてしまう。
こっちか。
しかし改めて向き合うと、違和感を感じる。
なるほどな、この感じ。
エストは警戒を強めていく。




