こんなはずでは
輸送部隊を襲った「!!」の拠点は輸送路から3キロも離れていない廃村にあった。
襲撃場所から村まで輸送部隊の兵士たちに食料を運ばせ、敢えてその位置を明かしたのは隊長のクフェナの指示だというが、理由までは伝えれていない。
何か思惑があるのか?など新参者のヤクダイには知るすべはなく、与えられた仕事に従事している。
すると翌日、彼女はクフェナのいる家に呼ばれた。
ヤクダイが部屋に入ると、そこにいたのはクフェナと彼女の補佐であるジパム、他には副隊長のコゴトウが並んで座っていた。
コゴトウに着席を勧められ、クフェナの正面にある椅子に座ると早速
「どうかねぇ、ついてこれそうかい?」
シワシワの顔をくしゃくしゃにして笑顔を向けながらヤクダイに問いかける。
こんな人の良さそうな老婆が隊長とは何度会っても信じられない。
そんな彼女の思いをよそに、手に持った袋から菓子を取り出して薦めてきた。
一つ摘んでみると、シートリフ銘菓猫のフンだった。かりんとう程度の大きさで甘いのだが、シマチョウのような食感がいくら噛んでも噛み切れず、飲み込むタイミングがわからないのが苦手だった。
食べようか悩んでいると、老婆は左右の二人にも菓子を薦め、自分も一つ口に入れる。
目の前で三人にもっちゃもっちゃとやられると、自分だけ食べないというわけにもいかず、仕方なく口に入れた。
「まだ今だったら他にもあるからねぇ」
もっちゃしながらヤクダイの意思を確認する姿は緊張感にかけるが、尊重しようとしてくれるのは有り難い。
自分がこの国に来て、平凡な生活に向いていないと言うことは確信がもてた。
しかし、力を失った今の自分がここに居て何かできるのかはわからない。
思考ともっちゃを止め、力強い眼差しでクフェナを見る。
「私は…」
屋外で破裂音が鳴り響いた。
何度も続くそれに混じって敵襲を告げる鐘の音と叫び声が飛び交う。
驚いたヤクダイが菓子を飲み込む間に三人は既に動き出している。
三人の後に続いて表に出ると、表には教育担当のフロイゾイがいた。彼はヤクダイを襲撃者から遠ざけるように誘導する。
足手まといは離脱するしかない。本意ではないが、今はその指示に従うしかない。
ただ、これで彼女の部隊に対する残留の意思はより一層、強まることになる。




