都合
ピゼットは外務省大臣キザルべの指示でソラロンタスに向う。
彼はこの国を担当して三年ほどしか経っておらず、王宮では軽視されていた。
それに対して彼は特に気にしなかったのは、ある人物の存在があったからだ。
王都の南にある港町タルネフ、そこにある商館の一つに彼女はいた。
「そろそろいらっしゃる頃だろうと思っていました」
発令されてから二十日ほど経ち既に軍備は整っていたが、どこに出征するかで未だに揉めていた。
家老であるマバート、ジェロノ、ソレアは初代国王ソラロンタスを助けて鬼を降した忠臣の末裔で、その血を引く彼らも国の有事があれば、命を惜しまない忠義心を持っていた。
しかし反面、平時においては互いにいがみ合い、常に不満を持っている。
そんな状況で今回出征するのはジェロノだったが、遠征先を決めきれずにいた。
三人の家老にはそれぞれ懇意にしている国がある。
ジェロノはシートリフという海の女神を祀った国。
御伽話では、海妖獣に襲われていた女神を救ったと言われ、それがきっかけでその地方では豊かな海産物に恵まれるようになったとされている。
ジェロノ自身はそこに向かい、体裁だけ整えてたあと互いに損害なく撤退することを望んでいた。
所が今回はマバートが反発して、ペリニシアへの侵攻案を譲らなかった。
ペリニシアと懇意にしていたのはソランで、自分の友好国に対する立場を重視し、ジェロノの肩を持つているが肝心の国王が決断を渋っていた。
応接室でこの話を聞いたピゼットは尋ねた。
「ハイゼラ様のお考えを教えて下さい」
彼女に聞いた理由。それはハイゼラがこの国で三家老に匹敵する力を持っていたからだ。
彼女の祖先は初代国王が偉業を成したとき、私財を注いで物質を調達してソロランタスを助けた。説話には出てこないが、その助力が無ければ大成しなかったかもしれない。
後にその功績から国の流通を任され、それに応えるように繁栄させていったキビ財閥の存在は、いつしか国王や三家老さえも無視ができなくなっていた。
恐らく出征先の決定には彼女が関わって来るだろう。




