惑いと恐怖
ラノアに喝を入れられたハトマンとレミエルは、疑心の呪縛から解き放たれたように動き出す。
ハトマンは隊主ぜリンの下へ走り、レミエルは魔物に魂済導潔を使って指揮下に置こうとする。
二度、三度試すが効力は表れない。彼よりも等位の高い者によって魔物化されたようだ。そう悟った彼は、それなら自分が支配下に置ける魔物を使えばいい。
と考え標的を物色する。
幸い魔物の側に幾らでも転がっている。それなら、と中でも一番近いのを選ぶ。
コイツだな。
そう思ったレミエルが苟匿顕を使うとイグルが魔物化し始めた。
続けざまに魂済導潔を使って魔物を操る。
見ればラノアがこちらを睨んでいた。
こんな状況だ、事故があってもおかしくはない、死んでも悪く思うなよ。
建前では魔物の動きを止めようとしているが、実際は自分が助かれば、他にどんな被害が出ようと関係なかった。
「隊主!ご無事でしたか!?」
へたり込んでいるぜリンを助け起こしながら、ハトマンが言う。
「おおっ!ハトマン!何処にいた!?と、ともかく、逃げるんだ!手をかせ!!」
必死にしがみつく隊主のせいで身動きができないハトマンだったが、振り払うこともできずに、落ち着いてと繰り返すしかなかった。
❚砂牢❚
ダイアが築いた牢獄は魔物に掴みかかる魔物をまとめて捕獲した。これで少しは動きを止められるだろう。
確信した彼らは怪我人を救うため行動する。ラノアと一緒に数人を避難させ、新たな救助しようとした。
その時、牢が弾け魔物が再び暴れ出す。
その4つの腕には、無惨に引き裂かれた魔物が握られている。
コイツは俺らの手に負える相手じゃないな。
シアリスが珍しいく、困った顔を見せた。
林の中で魔物に襲われ、彷徨っていたロジンだったが、三人の男たちに危ないところを救われて行動を共にしていた。
聞けば彼らは「はじまりの村」に関する調査をしているという。
ザレルと名乗った老人は魔物の研究者で、二人は助手だと紹介された。
この時ロジンは、ザレルという名がどこかで聞いたことのあるような気がしたのだが、研究者に知り合いがいなかったので聞き流してしまう。
それよりも彼にとって大事だったのは、レミエル達を逮捕しなければならないという思いだった。
彼はザレル達にも事情を話し、部隊へ戻る為に協力を頼んでいた。




