王都にて
「よろしいかな?」
ザレルの私邸のなかで、誰もが招き入れられる訳ではない書斎で彼が問いかけたのは、警護にあたっているルディスに対してだった。
秘密裏に行われたているこの会合の場にいたのは、ザレルとその秘書のリンデ、ルディス。そして報告者の笑顔が嘘臭い女。
国の要職を務めるザレルの私邸を訪れるだけあって、相応しい身なりをしてはいるが、笑顔をひと皮剥けば、秘めた悪臭が漂ってくるのではないか?と思わせるほど澱んだ目をしている。それはまるで今日の天気のようだった。
彼女の報告は、魔王を崇め魔物を操って世界を支配しようとする狂信者集団「はじまりの村」に関してのものだった。
報告が終わり女が退出すると、ザレルが何やら物思いに耽っている。
静かな部屋でリンデがスンッと鼻で息を吸う。
それを待っていたようにパラパラと雨が降りはじめ、ほんの数十秒で激しい雷雨となった。
リンデが部屋の灯りをつけ、窓のカーテンを閉めていると
「やはり私が行きましょう。一緒には、そう、ジコンさんにしましょう。あなたとの相性も良いでしょうし。あとは…」
ザレルが指先で書斎机をトントンと叩きながら思案する。だが、すぐに
「そうですね、ヤクダイさんも連れていきましょう。あの娘の力も見てみたいですから」
一人で納得したように数度頷くと、ルディスに向かって言った。
「よろしいかな?」
ルディスは了承し、旅の手配をするために部屋を出ていく。彼が屋敷を出る時には、雨はあがっていた。
部屋に残ったザレルは
「そういえば、あなたの所にも優秀な女性がいるようですね」
声をかけられたリンデはすぐに答える。
「はい、若いですが優秀な娘です」
それを聞いたザレルは彼女にある指示をする。
リンデが退出すると、ザレルは再び思案を巡らせる。
あとは、直系でないとはいえ、甥のぜリンだな。彼の行いがこれ以上、王国の七光りの一つ「黃仄輝」の輝きに影をさすようなら、それなりの処分をしなければならない。
だが、まずははじまりの村か…。
考えが纏まったのか、ザレルは部屋を出て行く。
これが魔王城へと向かう半年前の事だった。
ザレルの屋敷を出た女はどしゃ降りの中、城へと向かっていた。
通用門を通り、控室で着替えをした後は、宰相であるセラーゼの執務室へと向った。




