目的地
「おーい!こっちだ!」
イグルがナウゼ達に呼びかける。その傍らには一人の男がいた。
初対面の男にフロロがさっそくイキリだす。
「んだァ!てめェわァ!うルァァァ!」
語尾に得意の巻舌技巧を駆使して凄む姿は、なんとなくそれっぽい。
動揺のあまり顔を強張らせて固まる男を見たイグルが
「まあまあ、兄さん方。こいつはアモックっつって、俺らとツルもうって野郎なんで、仲良くしてやって下さい」
続けて、アモックがほんの数日前に召喚状を受け取った一般市民だと告げると、ナウゼ達の機嫌は途端に良くなった。自分より力のない者と知って安心したようだ。
そこから五人は、まるで古くからの知り合いだったように、仲良く酒を酌み交わしながら、出発までの時を過ごした。
魔王城へと向かうために街を出て数日、レミエルがいる部隊に伝令がやって来る。
「ハトマン様、目的地に到着致しました」
報告を受けている男の顔を見ると、この間は名前を思い出すことができなかった男が頷いている。結局、名前を聞いてもピンと来ることがなく、ぼんやりと様子を見ていると。
するとどうやら話が終わったようで、彼の方にやって来る。
「我々の魔物が配置についたようだ」
そう言って、「ついてこい」と合図して歩き出した。
この作戦の本当の目的地はまだ随分先のはずだが、ハトマンは我々の、意味を考えれば、ここで稼いで撤収し、危険な場所へは彼らに向かわせるのだろう。
振り返ったレミエルの視線の先には、のんびりとおちゃをすする一組の男女の姿があった。
ロジンとラノアとか言ったか?ハトマンが二人の同行を許可した意味がようやく解った。
そんな事まで考えているなら、この先にはよほど良い状況がつくられているだろう。期待に胸を弾ませて、レミエルの足取りが速くなった。
ほんの数キロ、目的地に到着したレミエルが感じたのは、もう二度とハトマンの名を忘れない、ということだった。




