揺らぐ心
セラーゼの執務室に呼ばれたコゾロナは不満を胸に秘めていた。というのも、今日は彼女と信者たちにとって大切な日だったから。七光りというこの国を支える者として、等しく、対等な立場だというのに、それでも彼女はセラーゼの召喚に抗うことは出来なかった。
「どうぞ、入って」
執務室の扉が開く、室内にいたベリルがコゾロナをソファーへと促すと
「座って」
声の主は?当然セラーゼなのだがさっきまでの不満が嘘のように、促されるまま腰を下ろす。従順なコゾロナの様子に微笑むセラーゼもまた、そのすぐ隣に腰をおろした。
「最近、何か変わったことはあったかしら?」
何気ない問いかけをしながら、セラーゼはコゾロナの髪に触れる。
「そ、そうですね、ここ最近また身寄りのない子供たちが私たちを頼って来てくれています。時期もじきです…し…」
答えるコゾロナに笑顔を向けながら、セラーゼの指はいつの間にかうなじを伝い、肩を抱くような体制から胸元へ到達していた。
「そReで きょぅ、んっ、はっ…」
彼女の声が、純粋に。指の動きを表現するような反応がうれしいのかセラーゼは満足げな笑みを浮かべていた。その時
「 」
小さく囁いたセラーゼの言葉は、残念ながらコゾロナには聞こえていなかったのかもしれない。だが
ベリルにはしっかりと聞こえていた。
あなたのもオモチャ、良い感じみたいよ。
どうして聞こえたのだろう?
それは、コゾロナを弄ぶセラーゼの視線や表情が、確実にベリルの嫉妬を掻き立てているのがわかっていたからだ。
セラーゼは何故か今、レミエル達に起こっている事を知っていた。しかし、彼らの距離でそれを知るのは本来なら不可能なはずなのだが、セラーゼには、ある力があった。
虫告、俗に言う虫の知らせと言うやつだ。この力は、彼女が対象者と行為をすることによって虫を植え付け、その行為の度合いによって受ける情報の精度が変わるという。
また、虫を植え付けられた者たちは行為の度合いによって、セラーゼへの依存度が変化するらしい。
「そろそろ」
彼女の言葉がコゾロナを刺激する。
この時間を永遠に。
思いを断ち切るようにセラーゼが
「本当に、そろそろ行きなさい」
未練を残しながら、ようやく立ち上がったコゾロナがようやく部屋を後にする。
それを見送り、扉が閉まった瞬間、ベリルが
「セラーゼ様、まさか?」
「大丈夫よ、あなたが思っているほどじゃない」
虫告、この力の欠点は、虫の寿命にあった。比較的短命な虫の寿命を補う為に、定期的な行為をしなければならないのだ。
それを知っているベリルは、ここ最近の訪問者を思い出していると
「いらっしゃい」
セラーゼが優しく声をかけた。
そして…
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