時として
物事とは、思うようにいかないものである。
この言葉は、過去の偉人から現代の若者まで、一度は体験することだ。そして今回、体験することになるのはレミエルという名の青年らしい。
彼は現在置かれている自分の立場を優位にするために、以前からザレル一行の動向を伺っていた。しかし今まで機会はなく、諦めて無理やり売り込みをかけようか?
とまで考え始めていた時にようやくチャンスは訪れた。
どんな事情でこんなことになったのだろう?
原因の一端、ではなくその、ほぼ直接的な要因となったレミエルがそんなことを考えているのは、自分にはその認識が全く無かったからなのだろう。
詳細を知らされぬまま現場作業をする者にとって、自分の役割がいかに重要なものなのかを説明されても、その重みに耐えきれるとは限らない。それならば真実は上司の胸の中にしまっておく方が良いだろう。そうすれば彼らの心に負担がかからないから。
で、この有様と言う訳なのだが、当事者には全く自覚があるはずもない。
理不尽に追い詰められる現状から逃れるために、彼は拒魂を抜く。それだけだ。
眼前にはいきり立つ複数の拒魂が脈打つように蠢いている。
イクか…。
意を決したレミエルが右手の人差し指と親指で輪をつくる。サイズは?ちょうど、そう、いつも握っているモノと同じ。自分に最も馴染んだ大きさと同じだ。
気が付けば左手もまた、同じように輪を作っていた。不意にレミエルの口から言葉が漏れる。
彼の言葉は拒魂を叱責するようであり、懐柔するようでもあった。また言葉で攻めると同時に左右の指で作った輪を激しく時には激しく、また素早く動かして魂の浄化を試みる。
おそらく右手はスピード、左はパワーを宿しているのだろう。やがて儀式の効果が表れたのか、拒魂の先端に変化があらわれてくる。まるで儀式によって清められたような透明な魂がじんわりと溢れ出してきたのだ。拒魂の一部となって個を封じられ、我慢を強いられてきた魂の一部がこぼれ出したようだ。
この様子を見ていたジコンが声を上げる。
「ほう。…だが、ここから…」




