きょこん、たつ
国境へと急ぐザレル一行を待ち受けていたのは?
召喚された鬼たちにの残骸と兵士たちや民間人の亡骸、そして能力のない人間にも感じ取ることが出来るほどの異質な肌感に先へ進むことが出来ずに戸惑う者たち。
それでも
「またイったよ!」
自薦、他薦を問わず腕に覚えありという輩が飛び込んでいく。これは彼らの心が正義感に満ち溢れていたわけではなく、事態を解決できれば有名になれるという打算的な考えや自分に未知なる力が眠っていると思い込んでいるからだった。
タチの悪い事に、こういった者たちの中にはごく稀に真の力なるモノが覚醒することがある。
どうやら今回はアタリだったらしい。
ザレル達の目の前で貧相だった男の肉体が劇的な変化を遂げていく。
「これは…」
目の前の変化に驚きを隠せないルディスとその傍で言葉を失うジコンだったが、彼らの表情は対照的だった。肉体の変貌に高揚した顔のルディスは肉体以外の変化にも興味を抱いている様子だが、ジコンは目の前の惨劇に少し青ざめている。
「またイったよ!」
「にいちゃん!がんばれ!」
幼い兄弟に励まされ、彼は力を求めてそこに向かう。その歩みに迷いはない。願いは一つ、力を手に入れることだ貧しい家庭で幼い弟妹を抱え、つらい日々が終わる。いや、終わらせる。力を手に入れて!金持ちになって!負の呪縛から解放されるんだ!
強い意志を持って臨んだはずだったが、ここに到った彼が見たのは無数の拒魂が集合してそそり立つ姿だ。無感の人間でさえここではその存在を知ることが出来る場所。現世と言えばよいのだろうか?
召喚された鬼によって奪われた者たちの魂は侵され、常世へと旅立つことなく拒魂となって現世を彷徨う場所。そこに男は立っていた。




