じゃないほう
不敵な笑みを浮かべる暗殺者。賊の正体は、最近では巷でも名前が知れ渡るほどの人物だ。
その名も
「ジェンダス兄弟」
彼らの受けた仕事は、ほぼ確実に遂行される。この界隈での顧客満足度は地域でも上位に入るという双子の暗殺者なのだ。
ただし、彼らの名前が有名になったのは暗殺に対する完遂率が高いから、といった理由ではなかった。
いや、むしろ達成できなかった仕事のせいで名前が売れたと言える。それは今回のような要人暗殺において兄が失敗し、捕縛されることが原因なのだ。
捕まった兄による自白。衝撃の暗殺ラインナップに死刑を求刑されたことは数知れない。しかし、今までに刑が執行されたことは一度もなかった。そう、それまでに弟が救出してしまうから…。
結果として彼らの名声だけが世間を騒がすことになっていた。
取り押さえられた男が顔を上げ不敵に笑う。
「あんた運が良いよ。弟に別件が入ってるんだもん」
生意気な口ぶりにザレル達は僅かに視線を送りあう。この国において無防備な自分達より優先される相手?
心当たりと言えば、ソラロンタスのジェロノか?
「少し急ぐ必要があるみたいですね」
周囲がざわつく、彼の言葉は諸業記の発行の延期を意味していたからだ。けれど選択肢はない。
彼らの夜は深い闇へと消えていき、既に始まっていた明日に少し遅れて参加する。




