物語は加速する
この様子だと明日には目的地にたどり着けそうだ。
それは良い。問題は到着までに四つの事件と三つの夜をこなさなければならない、ということ。
「ペリニシア漫遊記」と称される書物は国内でもある程度の支持を受けた読み物として知られている。地方に蔓延る悪を老公とその部下たちが暴き、粛清していくという痛快エンタメストーリーは、一時期ほどではないが、相変わらずの人気があるらしい。
だが、流石にこれはやり過ぎだろう。
「大丈夫です、検討します!」
ナウゼの、素人目に見ても無理がある計画にでさえ弱音を吐かない裏方の姿に、彼に尊敬と不安を込めた視線を送らせる。
やがて時は来た。太陽がゆっくりと沈み、迫りくる夕闇に全員が一丸となって挑む。
闇が深さを増し、天に輝く星の数が増え始めた頃、一つ目の夜と一つの事件が終わった。夜に潜む巨悪は今日、ここで幕を閉じた。
大変な事件だ。
ナウゼはそう感じていた。なぜならこの時点でほぼすべての夜を消費していたから…。
夜明けは近い。もう間に合わないのだろうか?他人事ながら心配してしまうのは彼が思わず
「検討を加速します!」
声をかけようとした瞬間の発言だった。こう言われてしまえば本来部外者の彼に出来ることは無い。
とりあえず、加速する検討によって打ち出された二つの夜が幕を開けることになった。
一つの夜に二つの事件。
ザレル達は武家屋敷に招かれている。
「このままでは我が領が悪の手先によって操られてしまいます、何卒、ご老公のお力で奴らを!」
奸計によって権力を奪われた忠臣の言葉を聞いたナウゼが腰を浮かす。
するとジコンが彼の膝に軽く手を置いた。
思い直したように座りなおすナウゼの耳に女中の声が
「お茶をお持ちしました」
扉から入ってきたのはこの事件に…。
今夜の事件に深くかかわってる女中だ。彼女が来客、そして主人にお茶を出して退出しようとする、そこで
「ところでお嬢さん、あの男性とはどんな関係で?」
ザレルが言った。
同時に天井が破られ、賊が侵入する。不敵にも顔を隠す事無く現れたのはよほどの自信があるのだろう。その顔は、この事件…、もしくはあの事件の関係者に間違いなかった。
腰を浮かし、立ち上がろうとするナウゼの傍で扉を蹴破り、新たな賊が侵入する。
そんななか、驚愕した様子の女中が表情を崩さす賊の脇をすり抜けて退出した。
改めて後から侵入した賊を見ると、こちらも顔を隠していない。そう、見覚えのある顔を。
こうして一つの夜に二つの事件が動き出す。




