ご都合主義、ステップ2
鏡に走った亀裂は瞬く間に広がる。
同時に、その場にいた者たちはこの後に体験するのだ。想像を絶する体験を!(当時)
…。
緊迫した場面、タメは十分。もうここまでくれば惹きは完璧。
皆の視線が鏡へを集中するのを待っていたように亀裂から一筋の光が天を衝く勢いで駈上った。青空に吸い込まれる輝きを全員が視界にとらえている。
「な・なに?」
未知の現象に身動きすることさえ忘れた傍観者たちは、視線の動きだけでこれらの光景を眺めていた。ただ、彼らの口は何故かほどよく開いていたという。
空が揺れた?いや、揺れた!
体感できるほどの変化が傍観者たちを襲った。さらに視覚でも認識できるほどの変化が表れ始める。晴天に突如現れたソレの肉体が空海に見え隠れし始めたのだ。その存在が動くたびに晴天に沸き立つ白波のような雲が生まれていく。はじめはゆっくり、徐々に早く、やがて激しく縦横無尽に天空を蹂躙する。
沸き立つ雲はいつの間にか澄んだ白から濁ったどす黒いものに変わっていた。まるで空底の泥を巻き上げたように…。
湧き上がる雲は留まることなく周囲を埋め尽くしていく。恐らくかなりの広範囲でこの雲が目撃されただろう濁った雲の発生源、最も厚みのある場所にぼんやりとした光が生まれた。
「龍遇空」
誰かが言った。
半開きの口がこの緊張の中でも乾いていなかった誰かが…。




