悪の組織の
女性が部屋を出ると、通りがかった男が声をかけてきた。
「あっ!ルトラじゃん、ってことはもしかして!?」
興味津々、といった感じで扉を眺める男に対し、ルトラの左手が素早く動く。
あっという間に男の左耳を掴んで、そのまま歩き出すルトラ。口の減らない男は、痛いとかヤメてと言いながら引っ張られていく。そんな二人が立ち止まったのは、ある扉の前。ルトラは空いている右手でノックをし
「お連れしました」
と声をかけると、室内からはどうぞという返事の後に扉が開く。
二人を招き入れたのは、傷だらけの装備に身を包んだ、ダイアという大男だった。彼がしゃがれた声で言う。
「エストさん、またですか!?」
エストはがこの部屋を訪れる時には、必ずと言っていいほど誰かしらを伴っていた。彼曰く、誰もが俺を放っておけない、みんなの偶像と言うことらしい。
同行者にとっては幼児の引率と同じ感覚でしかないだが。
「で!新人、どんな感じ?」
エストが唐突に発言する。ダイアの言葉を無視した訳ではない。自分の思った事が「つい」口に出てしまうタイプなのだ。その事を知っている二人は、気にもしていない。ただ、その言葉には反応し、ダイアがルトラを見る。
「夢を見ている頃だと思います。受け入れてくれると良いんですけど」
それだけ言ったルトラが部屋を出る。面倒な子守から早く開放されたかったのかもしれない。
そこでエストが、そろそろ真面目な話でもしようか?と聞いた。
ヤクダイが目を覚ますと、体の自由は戻っているようだ。
あとは、そう思って神異力を使おうとするが、やはり使うことができない。敵地に囚われているのだから当然なのだが、それでも少し気分は沈んだ。
唐突にノックの音がする。
黙っていると、少し間をおいて昨日の女性が入ってきた。当たり障りの無い会話から、自分に対する害意が無いと感じたヤクダイは思いきって聞いてみる。
「私はこれからどうなる?」
毎回この質問に困るルトラは、いつもの定型文を答える。
「それは貴女が決める事なの。未来は自分で選びなさい」




