第一話 証明開始
「……とまあそういう事ですから皆さん長期休暇中は身の安全に気を付けるように。では終わります、起立!礼!」
『さようなら』
今日は7月20日、夏休みの出校日だ。須川市にある県立高校に通う高校生、皇 きよとは担任の長話に疲れて親友の立花 真尋と愚痴をこぼす。
「……あーあ、なんでわざわざ行きたくもない学校に行かなきゃいけないんだろうな。しかも担任の話長すぎ。病むわ」
「わかる。休み前なんだから必要な事だけでいいのに、あのもじゃもじゃ、思いっきり話長くしやがるからなぁ」
「ほんっとにな!あいつ話引き伸ばさないと死ぬんじゃねえの?」
きよと達の担任は素晴らしいくらいに髪が捻れてアフロのようになっている。尤も、それは毛量が多ければの話だが。
そう、彼の頭は大変寂しいことになってしまっているのだ。それも含めて担任は生徒達に裏でネタにされ、モンジャラだのなんだのと色々と不名誉なあだ名を付けられている。そしてそれは今日に至るまで一度もバレたことがない。恐らくは卒業まで真実を知ることはないだろう。
「ッハッハッハ!ワンチャンあるな!」
「あるよな!?ハハハハハハハ!」
「アッハハハハハ!」
「はぁ……帰るか」
「せやな」
ひとしきり愚痴を並べた後に飽きてしまい教室を出ることにした。
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ふと思いつき、きよとは真尋に声をかける。
「お前電車だろ?」
「うん。お前は数少ない自転車勢だもんな」
「そうだぞ〜、自転車いいぞ自転車」
「疲れねえの?」
「電車賃浮くなら易いもんよ」
「やば……。じゃあな」
「あいよ!……なんであいつちょっと引き気味だっだんだろ」
少し気にはなったが、忘れることにしたきよとは自転車に乗り、帰路に就いた。
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「ただいま〜」
真尋と別れて40分。最初は応えたものの、かれこれ二年もほぼ毎日通学しているので慣れた足取りで家に着くと、同じ学校で一個下の妹、澪が出迎えてくれた。
「おかえり、お兄ちゃん!今日も頑張ったね!」
「はいはいそういうのいいから」
「むぅ、ちょっとくらいいいじゃん!」
「いやまずは休ませて欲しいんだけど……」
「休むならまずはご飯だよ!あとおシャワーもね!」
「お前だんだんメイドみたいになってきてない?」
「気のせい気のせい」
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順番に軽くシャワーを浴びて着替えた2人は夕食を摂る。
『いただきます』
『いただきます』
今日は澪お手製のハンバーグ。ハンバーグを一口食べたきよとは驚きの表情を作る。
「は~、おまえも飯作んのうまくなったなぁ」
「えへへ。ありがと、お兄ちゃん」
そんな他愛もない会話をしていると、つけっぱなしだったテレビからニュース番組が聞こえてきた。
「続いてのニュースです。今日未明、須川市東区にて火災が発生しました。火災の発生した家に住んでいた24歳の男性が全身に火傷などの重症を負いましたが、幸い命に別状はないとのことです。」
「うわ、超近いじゃん」
「あーここ知ってる。ほら、通学路通学路」
「うぅ、そういうの教えて欲しくなかったなぁ……」
他人事とは思えないニュースに若干顔を顰めた澪は、テレビに何か奇妙なものが映り込んでいることに気が付いた。怪訝そうな表情でテレビを指さした彼女の目線は火事が発生した家の隣、そこそこ大きな木に集中している。
「……あれ?ねぇ、あそこにあるの、なんだろう……?」
「ん?どれ?」
「ここの!亀裂みたいな、ひび割れてるみたいな所!」
「えー……?あー……確かに不思議だな。液晶がダメになったわけでもなさそうだし、この場合は向こう側に何かあると見た方が自然か」
「行って……みる……?」
「興味はある」
「じゃあ早くご飯食べちゃおう、消えちゃわないうちに行かないと!」
「あいよっと。胸焼け来ても知らねえからな」
少しペースを上げてご飯を食べ終わった二人は、着替えて自転車に乗って火災現場に向かった。
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先に着いた澪がきよとを急かす。
「あった!あれ!ほら、早く早く!」
「まだあったのか、どれどれ……」
「あんまり近付き過ぎたら危ないかもよ……?」
「大丈夫、まだそれほどヒビ入ってないっぽいぞ」
「えっ?」
「ん?これヒビが入ってないんじゃなくて再生してんのか……?どうなってんだこれ?」
きよとが亀裂に触れようとして手を伸ばすが、寸前で激しく光を放った。
「うわっ!眩し!?」
「うっ、何これ!?」
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暫くすると光が落ち着き、そこには何もない真っ白な空間が広がっていた。
「……あ?なんだこれ、さっきまでの景色が全部消えて……?」
「お兄ちゃん、私の姿見えてる!?」
「え?おう、バッチリ見えてる」
「よかった、周りの景色が全部消えちゃったからびっくりしたよ〜!それよりここどこなんだろ……?」
すると後ろから不思議な雰囲気を醸し出すモデルのような体系をした銀髪の麗人が話しかけてきた。
「それについてはこちらから説明させてもらおう」
「うわびっくりした……誰だお前」
「……」
警戒してか無意識に澪がきよとの後ろに移動する。
「私の名はウロボロス。これから君達を導く者だ」
「導く…?」
「そう。皇 きよと、そして皇 澪。君達は罪を犯した。だからこれから贖いの旅に出なければならない。だが何も知らない君達だけだときっとちっとも進まないだろうから私がサポートにつくことになったんだ」
「いや、いきなり罪だの贖いだの言われてもこちとらさっぱり分かんねえんだわ。そもそもお前は何者なんだ?あ、名前忘れたとかじゃねえぞ、また名前言い出そうもんならぶっ飛ばすからな」
そう一気にまくし立てると、一瞬考えた後に口を開く。
「私が何者か、か。……時間というものには『過去』、『現在』、『未来』という3つの枠組みがあるのは分かるね?私はその内の『現在』を管理する女神だ」
などと突拍子もないことを言い始めた。
「……め、女神……???あの、もしかして厨二病患者?はぁーマジでいたんだな、マンガだけの話かと思ってたわ」
「初対面なのに失礼だとは思わないのかな……まあいいさ。もちろん、すぐに信じろなんて無理は言わないよ。もしこの状況を君達が完全に理解出来ているとしたら、私は君達に感服というより恐怖するだろう。それだけ今の状況は異質だ」
そこまで言って数秒沈黙が続くが、ウロボロスと名乗る女性が何かを思い出したようにまた口を開いた。
「……おっと、そういえば君達に返し忘れていたものがあったね」
「返し忘れていたもの……?私達、初対面なんですよね?」
「ああ、こちらで勝手に預かっていたんだ。ほら、君には後輩が1人いるだろう?それと、きよとも……“”妹がもう1人”“」
「妹……?あー……なんかいた気がするな、誰だったか……ここまで出てきてるんだけど……」
「答える前に返した方がいいだろう?ほら」
そう言いながら少女を二人どこからか出した。傷はどこにも付いていない。彼女達には手は出していないようだ。
一人は知っている。澪の同級生の柊カレンだ。あのツンケンした態度は忘れようにも忘れられない。しかしもう一人が全く思い出せない。存在そのものが異質なようにも感じるが、それはこの空間やウロボロスという女性が異質だからそう錯覚しているだけなのだろうか。何が何だか分からない、せめて情報を整理する時間だけでも欲しいものなのだが。
「うぅ……いたた……」
「カレン!?大丈夫……!?」
「……んぇ……あれ……?」
「皇 ゆりの、君の双子の妹だ。本当に何も覚えてないのかい?」
「あーーー……あーうん、あれだ、ずっと遠い県の学校行ってたから忘れてたんだ」
そうだ、思い出した。皇 ゆりの。双子だったきよととゆりのは、親が離婚した影響でゆりのだけ遠く離れた県へと引っ越して行ったのだ。
だがそんな彼女が何故今になって出てきたんだ……?
「んん……ごめん寝起きだからか全然頭働いてないわこれ、話についていけない」
「俺にもわからん」
「あははは、頼りにならないなぁ」
「気持ちは分かりますけどね。それにしてもここ、本当に何も無い……」
などと無駄話をしていると、ウロボロスが何やら説明してきた。
「時の流れというのは概念だ。目に見えないのが当たり前なのはわかるね?」
「あの、そんな事より私達をここに連れてきたという事は何か頼み事があるんですよね?」
「おや、君は意外と察しがいいんだね?その通り、今君達の住む世界は消失の危機に晒されている」
「は?」
急に予想をはるかに超える事を言われてその場にいた全員が耳を疑った。
「文字通りの意味だ。君達の住む世界はこのまま放っておけば完全に消失する」
「消失ぅ?ハッハッハ、バッカじゃねえの?あるわけないだろそんなの!」
そう笑い飛ばすと真顔のままウロボロスが言を返した。
「本当に?本当にそう思うのかい?」
「は……?」
「本当に昨日世界が滅ばなかったから、今日世界が滅ばなかったから明日も滅ぶはずないと、本気でそんな呑気な事が言えると思ってるのかな?“明日がある保証などどこにもないというのに“?」
「……どういう意味だよ、それ」
「ついてくるといい。見せてあげよう、これが君達の街の『現在』だ」
一行は街を見下ろせる小高い丘に転移し、街を眺めることになった。
「夜景……ですね」
暗い。とにかく暗い。一通り見下ろした感じ人の気配が極端に減っているので体感深夜2時から3時くらいだろうか、完全に夜中だ。
「うん、ただの夜だね。それ以外に変な所なんて……」
「どうかな?おかしいとは思わないかい?現在の時刻は午後五時ちょうど。ここまで暗くなるには季節の事を鑑みてもあまりに早すぎるし不自然だ」
五時……!?いや、そんなはずは無い。この暗さ、この人気のなさは夜中のものだ。これほどの静けさをたかだか夕方五時程度の街が持ち合わせていていいはずがない。
仮にそれが事実だとすると、考えられる結論は……。
「なら……『夜が来るのが早まった』……?」
「惜しいが違う。正解は『夜以外の時間帯が消失した』、だね」
などと、また予想を超えることを言ってくる。
「嘘だろ、そんなことあんの……!?」
「残念ながら実現してしまった。今は私達以外の時の神がどうにか押さえ込んでいる所だが、恐らくは時間の問題だ。だから君達の手を借りたいと思う。どうか協力して欲しい」
「なんで私達なんでしょうか?他にも適役がいたんじゃないですか?」
と、澪が不安げに問いかけると、またもや予想外の返答が返ってきた。
「君がそれを言うのか、鬼を宿す君が」
言われた途端目つきが少し変わり鋭くなる。あれは澪の目ではない、彼女が宿す鬼の目だ。
「……!知ってるんですか、私のこと」
「なんていったって時の女神だからね。知っているさ。君が産まれて間もない頃、この街で大騒動を起こし封印された鬼、望月 シュラ。その人柱となったのが君だ。そして彼女の人柱となった影響か、髪と瞳の色がそれぞれ黒と赤だったのが金と青に変わった。簡潔に言うとこんな感じだが、どうかな、どこか間違った所はあったかな?」
「すごい、どこも間違ってない……」
「さて、話が脱線してしまったね。この状況を打開するために君達の力を借りようと思っている。その理由なんだが、澪の存在ももちろん大きいんだけど、一番は君達が龍の力の最適性候補だからなんだ」
『龍の力の……最適性候補……?』
「そうだ。龍の封印を解き、その力を借りる。えーと……紙とボールペン、ないかな?」
「うわーお現代的な神サマだな」
「メモ帳で良ければ」
「そして都合良く出てくる紙とボールペン」
「普段から持ち歩いてるので」
「なんか真面目キャラが板につきすぎてない?大丈夫?」
「気のせいです、多分」
「多分っつったな今、今間違いなく多分っつったよな」
などと他愛ない会話をしているうちにウロボロスが地図を書いて渡してきた。
「……よし、まあ大雑把だけどこんな感じかな。だいたいこの4箇所に封印して祀るための小さな神殿があるはずだ」
「うっわ、なーんか『悪いけどお使い頼まれてくれ』って感じかってくらい雑だなこれ」
「あれ、きよとツッコミ役でいくの?じゃあボクはボケ役にしちゃおっかな〜」
「過労死するからやめて」
そんな馬鹿な話をしている間にも真面目なカレンが話を進める。
「それぞれに私達の名前が書かれてる……?」
「ああ、その4箇所に名前が書かれた人が向かい、封印を解く。これが現時点での目標だ。簡単だろ?」
「それはそうだけど、なんか意地悪なトラップとか置かれてそうだなぁ」
「トラップはない、私が保証しよう。ただし道中で邪魔だてが入るかもしれない」
「そういう時はどうするんですか?」
「私が君達を守るとも。それに万一私がやられても安心して欲しい。色んな世界から役立ちそうなのを何人か召喚しておいた。時の女神の権能ってやつだね」
そんなぶっ飛んだことを言うウロボロスに澪が驚きの声を上げた。
「権能ってそんなに幅広いんですか!?」
「私達以外にも時の神というのは存在しててね、それぞれが複数の世界の時を管理しているんだ。だからちょーっとイカサマすればそういう事も可能なのさ」
「なるほど……???」
「澪、諦めた方がいい。これ多分私達じゃ理解出来ない世界だと思うの」
「うぅ〜モヤモヤしちゃう……」
注目を集めるように、パンッと手を叩きながらウロボロスがまとめに入った。
「よし、話すべきことはこれであらかた話したはずだ。忘れてたことがあれば思い出し次第話すとしよう」
「そんな雑でいいのかよ」
「大丈夫さ。さあ出発しよう、あまり時間は残されてないぞ!」
そう言いながら、きよと達は夜の街に繰り出した。
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道中、あまり時間が経っていない頃。ゆりのがふと疑問に思ったのかウロボロスに声をかけた。
「ところで思ったんだけどさ」
「なんだい?」
「手伝ってくれる人達を喚んだんなら後ろからついてきててもおかしくないよね?見た感じボク達しかいないけどこれ大丈夫なの?」
「ああそれか……黙っておくつもりだったんだが気付かれたんなら仕方ない」
彼女曰く、召喚するための作業自体は完璧だったんものの、やはり消えかけの世界だからかどこかの過程で致命的なエラーが発生したらしい。恐らくは実行中か召喚直後だろう。そのせいで召喚した4人は離れ離れになってしまったのだという。いやいや、いやいやいや。
「ダメじゃねぇかしっかりしろ」
気付けばきよとは神を名乗る女性を叱責していた。
「ああ、完全に想定外だったし間違いなく大失態だ、すまない……。……ん?」
「どうかしたんですか?」
「近いな。“彼女“がいる」
「彼女…?」
「私が召喚した4人のうちの1人さ!いやあ私達は本当にラッキーだ、まさかこんなに早く生存確認できるとは!」
ウロボロスは嬉々として走り出した。
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「……む」
そこには九本の銀色の尻尾に銀色の長髪、銀色の狐耳を生やした小さな少女が居た。だいたい十代前半だろうか、幼い見た目をしている。
「こんばんは、お加減いかがかな?」
「……あー……はぁ、だいたい察したわ。まさかわしを召喚したのが同業者じゃったとはなぁ」
「同業者?ってことは」
「うむ。わしもそこのマヌケと同じ神じゃよ、役職は違うがの」
「今回に関しては何言われても言い逃れできないなぁ」
「役職が違うというのは?」
「うむ。こやつは『時』と『永遠』という概念を司る神、一方わしは豊穣神じゃ。あ、わしは狛と申すのじゃ、よろしくの〜」
「豊穣神かぁ、もっとThe・地母神!って感じかと思ってたけどこういうのもいいなぁ」
「わはは、ちっこくて悪かったの!……ってなんかロリコン疑惑がありそうな気がするのは気のせいかの?」
「ウロボロスっていう名前なら永遠の概念を管理してるって言われても納得出来そう」
「うむ、それなのに本人はこの調子じゃ、全く恥ずかしいわ」
「うむ!」
「うむ!」
「うむ!」
「やかましいわ!」
「いや流れ切るなや!」
この狛という人物もウロボロスに負けず劣らず元気な神様だ。これは騒がしいことになりそうだなぁなどと考えてみる。
「優しそうな神様で良かったね!」
「ね〜、神様ってもっと堅苦しいのかと思ってたけど、意外と人間くさいんだね!」
そう言いながらゆりのと澪がきよとをジーっと見つめている。
「俺見ながら言う理由が割とガチでわからんのだが」
「キミが困惑するかなーと思って」
「なんで俺今日こんないじめられてんの?」
「さ、早いとこ神殿探し、ついでに仲間探しに出発しよう、さっきも言った通り時間は限られている」
「あいよ、ちゃっちゃと済ませて次に行くか」
そこで急に狛が待ったをかける。
「ところでお主ら」
「え、あ、はいはいはいなんすか」
「ここにはわしらの邪魔をするつもりの者がいくらかおるようじゃぞ、対抗手段は持ち合わせておるんじゃろうな?」
『対抗手段……?』
そう言いながら澪を見る一同。理由はひとつしかない。
「な、なんでみんな一斉に私を見るの」
「だって鬼飼ってるんだから強いんだろうなーって」
「え」
「最近はよくお前に気使ってくれるって言ってたし」
「えぇ……」
「えーっと……普段から強そうなオーラが出てるし……?」
「みんなしてプレッシャーかけてこないでくれる!?あと最後のはどう考えても適当だよね!?」
「だって言おうとした事全部言われたんだもん……」
「かわいい!!」
キレながらかわいいなんて叫ぶのもどうかと思うが。
「戦力になりそうなのは1人だけか?」
「カレンもいけるでしょ!」
「私非力だけど」
「あー嘘ついたー!」
などと和気藹々と会話をする一同をみて、不安げに狛がため息を吐く。
「はぁ……足らんなぁ。本当にこやつらで良かったのか?」
「大丈夫なはずだ。きっと近い未来、彼らは私達の想像を遥かに上回る力を手に入れる」
「しょうがないのぉ……ちょっとばかり稽古をつけてやろう。なぁに、手加減の仕方くらい心得ておる」
『は?急すぎない!?』
「ゆくぞー、ほれっ」
『危ない!』
狛が手を地面に当て少し力を加えると地面が鋭く隆起する。そしてそれを澪がどこからか現れた刀で、カレンが指から撃ち出した魔力の弾丸で破壊した。
「お兄ちゃん大丈夫!?」
「怪我はないですか!?」
『だ、大丈夫……だけど……』
「何あいつら、急にイケメンに見えてきた」
「わかる、ボクも惚れちゃった」
「これ本当にあの2人だけが頼みの綱なのかえ?無理があるじゃろ」
「まあ……言わんとすることはわかるよ。だから君を喚んだんじゃないか」
「えー気が乗らんのぉ……まあいちいち些事如きで異世界から呼びつけるような真似は出来んじゃろうし、やるしかないのじゃろうがの」
「そう言って貰えて何よりだよ、まず君を選んだのには間違いはなかったみたいだね」
「当然じゃ。さて、わしの用は済んだぞ、手間をかけさせたの」
「ああ。初めの神殿は……『深淵龍アビス』……うん、ここでいいか。近いし」
「理由雑じゃな」
呆れるほど雑な理由で一同は深淵龍アビスの神殿に向かうのであった。