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義人の月  作者: 柚須 佳
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 その日の夜、私は昨日と今日の夕方に出会った、あの不思議な女性たちのことを考えていた。

 彼女たちは、誰なのだろう?

 いや、何者なのだろう?

 昨日と今日、同じ時間に、同じ場所で、同じ質問。

 車いすの少女は、偶然だと言っていた。しかし、こんな偶然はあるのだろうか?

 偶然にしては、出来すぎている。

 私は、自分の中で、最も納得の出来る結論を探していた。しかし、一向にその答えは見つからなかった。だが、この二日間でおこったことは、逃れようのない事実だし、それに、私にとって唯一の現実だ。そう受け止めて、私は無理やり考えるのを止めた。


 次の日は雨だった。

 普段なら、こんな雨の日は、犬の散歩などには行かないのだが、その日は違った。

 いつもの時間、六時半きっかりに家を出た。

 しかし、この雨の中、犬を連れ出すのは、さすがに気が引けた。

 仕方なく、私はタバコを買いに行く、という口実を自分に与えて家を出た。

 昨日、考えるのを止めたつもりだったが、どうしても気になって仕方がなかった。

 今日もまた、この時間に、あの場所に行けば、また、あの不思議な彼女たちに、出会えるかもしれない。

 そんな期待を胸に抱き、私は雨の中、一人で犬の散歩コースを歩いて行った。

 例のポイント、彼女たちに会った場所に着いたが、辺りに人影はなかった。

 私は周囲を見渡した。

 しかし、そこには、降りしきる雨と、雨音、そして、空虚な灰色の空気があるだけだった。

 私は、十分ほど、その場所で待った。その間に一人の女性が通りすぎて行ったが、その女性は、例の質問をしてこなかった。

 私は、少しがっかりした。しかし、自分の行いのバカバカしさにも気が付いた。そして、予定通りにタバコを買って、家に戻ることにした。

 この日は夜中まで雨が降り続いていた。

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