まさかの私がついでなんて!?
完結させられなかったらごめんなさい…
寒い。つい最近まで暑かったのが嘘みたいに、寒い。犬はいいよね、毛皮でもこもこ。
隣を歩く柴犬(?)を見おろすと、くりくりっとした瞳で見返してきた。可愛い。
私たちのお散歩も、中盤に差しかかる。と、いきなりリードを強く引かれる。引きずられて転びそうになった。
「こら! くじら!」
言い忘れたけど、うちの犬の名前はくじらである。ちょっと前にうちに来た元保護犬だ。柴犬だと思う。少なくとも、洋犬の血が混じっているようには見えない。
と、突然、目の前に、丸い模様が浮かんだ。それは…そう、言ってしまえば魔法陣。くじらは、まるで輪をくぐるように魔法陣の中に飛び込んでいく。
その瞬間、人外の力が私を強く引っ張った。リードを離せばよかったのかもしれない。けれど、私は、1度見捨てられたであろうくじらを、再び見放す気にはなれなかった。
だから私は、抗うすべもなく、くじらに続いて魔法陣の中に飛び込む羽目になった。
私とくじらを眩しい光が覆う。思わず私は目をつむった。無音の世界。私は外界との唯一の繋がり、くじらのリードを握った右手にぎゅっと力を込めた。
そんな状態がどれだけ続いただろうか。おそるおそる固くつむっていた目を開けると、私たちは、狭い部屋の中にいた。そして、黒いフードのついたマントを纏っている人々に囲まれていた。
「おや? 呼んだのは、勇者様だけのはず…なんだ、これは?」
これは、もしや異世界転移とやらだろうか。それにしても、可愛いくじらをこれ呼ばわりするなんて許せない…。という声が、喉まで出かかった。
「私のご主人様を、これ呼ばわりするなど、言語道断」
私は、ゆっくりと自分の右手から伸びるリードをたどった。
「は!? ちょっとまって、あんた誰よ? くじらを返して!」
くじらがいるはずの場所には、私と同じか、それより少し上の美青年が立っていた。しかも、私より身長が高い。でも、私は更に驚くことになる。
「安心してください、ご主人様。ご主人様のくじらはここにおります。」
彼は、私の足元に跪いた。その頭に揺れるのは、獣耳。そして、ぶんぶんと元気よく振られているのは、見慣れた綺麗に巻かれたしっぽ。
「勇者様。そのような耳も尾もない貧相な娘に跪くとは…」
黒い服を着た人のうち1人が進み出て、言った。だが、私の頭はそれどころではない。
まず、私とくじらは、異世界転移した。うん、これは認めざるを得ない事実だ。
そして、今、黒装束に囲まれている。視界に入っているのだから、おそらく正しいのだろう。
一番信じられないのは、召喚されたのが、くじらだということ。飼い主の私は邪魔者扱いって、ひどすぎない? しかも、くじらは超美青年になったのに、私は元のまま、ブスのまんま!!
「驚くのは分かりますが、あまり怒らないでいただきたいのです。」
くじらは、申し訳なさそうに眉を下げ、肩をすくめた。
そこから、くじらが話し出したのは、驚くべき内容だった。
暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。